社会保障費と借金返済以外、ほとんどお金が回ってない

歳出は最大のものが社会保障費で約33兆円、33.7%を占めています。先ほど見た公債金とほぼ同じ額です。この社会保障費の内訳は医療費と年金がそれぞれ35.8%、合わせると70%以上を占めています。年金は、医療費と並んで社会保障費の中で最も大きな割合を占めているのです。ここに介護を加えると約80%になります。特別会計を含めた年金・医療・介護・福祉その他の社会保障給付費全体の額は、18年度予算だと121.3兆円です。すなわち、社会保障給付費全体の約3割を、一般会計からの支出で穴埋めしているということです。

一般会計歳出における主要経費の推移をみてみます。2018年度とそこから30年も前の1988年度を比べると、社会保障費は10.4兆円から33兆円へ実に3倍以上に膨れ上がり、国債費、すなわち借金返済のお金も、11.5兆円から23.3兆円へ倍以上になっています。大きく増えたのは社会保障費と国債費だけです。交付税等は約5兆円増えていますが、20年前である98年度は15.9兆円ですから、それと比較すればむしろ減っています。社会保障費と借金返済以外にほとんどお金が回っていないのです。

「負担はしたくない。でもお金は欲しい」

借金と言うと、「将来世代への先送り」と言われ、あたかも今を生きる我々は負担をしないかのように錯覚してしまうかもしれませんが、間違いです。国の財政において、借金返済に当たる部分は極めて大きくなっています。これが大きく財政の足を引っ張り、今を生きる私たちのためのお金が十分に回っていない状況が生まれています。それが保育園の不足や大学の補助金削減等に現れています。つまり、「未来のための投資」にお金が回っていないのです。我々は、先人達が先送りした「負担」をもう受けています。この負担の先送りは、年金だけでなく、他の分野でもそうです。「負担はしたくない。でもお金は欲しい」という有権者の要望を叶えるには、未来の国民からお金を奪って財源確保するしかないのです。

ここから国税収入を見ていきます。割合の高い基幹3税(所得税、法人税、消費税)について、諸外国と税収対GDP比を比べてみると、日本の税制の大きな欠点が浮かび上がります。なお、GDPとは、要するに国内で生まれた「儲け」を全て合計したものです。税はこの「儲け」から取りますから、税収の多寡を他国と比べるには、儲けの何%を税金として取っているのか、つまり税収対GDP比で見るのが妥当、ということになります。では、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)に加盟している国々(日本を含め37カ国)と比較してみましょう。データの揃っている2015年で比較します(なお、この時点での加盟国は36カ国)。

GDP比で見た日本の消費税は極めて低い

まず、法人税収対GDP比を見てみると、日本は3.8%で、全体の6位です。「日本は法人税が高い」と言われますが、これを見るとそれが事実であることが分かります(図表1)。

OECD加盟国と日本の法人税収対GDP比