世界を覆うコロナ禍にあって、見劣りのする日本の財政出動。この根本原因を考えていくと、消費税の「低さ」に行き着く。弁護士の明石順平さんはそう主張する。それでもなお「消費税廃止」を訴える野党への怒りは、もう財政再建は不可能という日本の財政への暗い見通しと共にある――。
※本稿は、明石順平『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
財政再建はもう手遅れで絶対に不可能
財政再建のために増税や緊縮をすべきでしょうか。私はそうは思いません。もう手遅れであり、財政再建は絶対に不可能だからです。この国は1965年に特例国債を発行してから今に至るまで、一度たりとも借金の残高を減らすことができませんでした。積みあがった借金約1100兆円は、毎年5兆円の黒字を出しても、110年間かけてやっと半分の550兆円になるという膨大な額です。明らかに無理でしょう。財政再建なんて、無意味な苦しみを与えるだけであり、やるだけ無駄なのです。
なお、地方公共団体の債務等も含めた政府総債務残高対GDP比でいうと、日本は圧倒的な世界1位です(図表1)。これは先進国のみを比較したグラフですが、IMFにデータのある全ての国で比較しても、日本は1位です。200%を超えているのは日本だけ。こんなことをできるのは、まだ信頼が継続しているからです。しかし、人口予測を考慮すると、その信頼が継続するとは思えません。生産年齢人口の推移を見ると、今後は減る一方であり、回復する見込みはありません。
2018年には7500万人いた生産年齢人口が、2056年には5000万人を切ります。2500万人以上減るということです。2500万人というのは、今の近畿地方全部の人口を合わせた数より多いです。働き手の約3分の1がいなくなってしまうということです。