消費税への考えを変えさせたデータとは
増大する社会保障費について頭を悩ませているのはどの国でも同じです。したがって、税金を取る方からすれば、これほど優秀な税は無いでしょう。そして、国民の側からしても、たくさん取られた消費税が、真に社会保障の充実に使われるのであれば、文句は無いでしょう。だから高負担国家はうまく回っているのです。しかし、繰り返しますが、日本が今さら高い消費税率にしても、高負担国家と同じにはなりません。借金を積み上げ過ぎたため、返済に吸い込まれてしまうからです。
所得税・法人税・付加価値税対GDP比OECD平均値の推移を見てみると、付加価値税の割合が右肩上がりに増えています(図表3)。所得税は2010年あたりまで減少傾向にありましたが、その後反転しています。法人税は基本的に横ばいといったところです。
このような他国の情勢も見ると、消費税抜きで財政を維持することなどあり得ないことが分かります。消費税抜きで少子高齢化国家を運営するのは、人類の歴史上誰も成し遂げたことがない快挙と言えるでしょう。私はこの現実を見た時に、消費税は受け入れざるを得ないという考えになりました。なお、消費税減税や廃止を謳う人の中で、このようにOECDのデータを丹念に分析している人を見たことはありません。
減税論者が見ない「歳出拡大」という真実
所得税や法人税を上げれば、消費税を上げなくても社会保障費を捻出できるのだと言う人もいますが、現実にはそんな国家は地球上に存在しません。社会保障を充実させている国は、例外なく消費税負担が重いです。ただし、私は所得税や法人税を上げることを否定するわけではありません。この国の財政失敗の要因の一つが、所得税と法人税を減税し過ぎたことにあるからです。1990年代以降の税制改正が無かった場合の税収について、内閣府が試算を出しているので見てみましょう(図表4)。
改正が無ければ、税収が全く違ったことが分かります。特に所得税の減税の影響が大きく、99年以降は、改正しなかった場合との差額が毎年10兆円程度になっています。法人税の減税が強調されますが、実際には所得税減税の影響の方が大きいです。
「消費税は法人税減税の穴埋めに使われた」とさかんに喧伝されていますが、正確には所得税減税の穴埋めのようにもなっています。というか、そちらの額の方が大きいです。さらに重要なのは、穴の方が年々広がってしまっているため、全然穴を埋めることができていないということです。消費税減税を主張する人は、この歳出の拡大という事実に触れません。所得税収がピークだった1991年度の一般会計歳出は約70兆円に過ぎませんが、今は100兆円を超えています。そして、今後はもっと恐ろしい勢いで増えていきます。所得税や法人税をピーク時と同じくらいの水準に戻しても、消費税抜きではこの莫大な歳出を賄えません。働き手が急減する一方で、高齢者は増えていくからです。