「ADHD」の患者宅はゴミ部屋であることが多い

この様子を見ていて、精神科医の仮屋暢聡医師(まいんずたわーメンタルクリニック院長)の言葉を思い出した。

仮屋医師によると、「注意欠如・多動性障害」(ADHD)の患者宅はゴミ部屋であることが多いという。ADHDは発達障害の一種で、忘れ物やミスが多い「不注意さ」や、落ち着きがなく行列を待てなかったり、興味のあること以外に関心を示さなかったりする「多動性」「衝動性」があるとされる。この障害が知られる10年ほど前までは「性格」といわれていたが、現在は障害と認められ、薬物治療が有効であることもわかっている。

「ADHDの人は、順序立てて物事を整理できなかったり、大事な物と不要な物の区別ができなかったりするために、学校では机の中の整理ができず、家でも物が捨てられなくて部屋に物があふれています。生ゴミと書類が同列に置いてある部屋になっていることも多いんですよ。物理的にも片付けられないし、頭の中もごちゃごちゃして整理ができない。パソコンのデスクトップにフォルダをいっぱい置いてある場合があるでしょう。思考がああいうような状態になっているから、一生懸命探さないとどこに物があるかわからないんです」(仮屋医師)

医師や弁護士、大企業勤務でも「片付けられない」

きれいな部屋に住むADHDの人は、非常に少ないのだという。仮屋医師に、ADHDの人のよくある部屋の写真を見せてもらった。たしかに物があふれている。

ADHDの人の部屋の例
写真提供=仮屋暢聡医師
ADHDの人の部屋の例

「子供の時は親が面倒を見てくれるからいいのですが、成人すると日常的なことを見てくれる人はいなくなりますよね。そうすると、物もお金も自分が管理しなければならない。加えて大学生まではYESとNOで答えがある世界だったのが、大人になると答えのない中で“ベターチョイス”をする必要がある。ADHDの人はマルチタスクが苦手であることが多いので、優先順位や段取りがつけられず、作業がすべて中途半端になってしまうんです。部屋の中の整理も同じですね」

ADHDにかかっている割合は、成人の2.5%といわれ、高確率で遺伝する。片方の親がADHDであれば、子供4人生まれたとして3人がADHDを引き継ぐといわれるほど。そして成長するにつれ、「アルコール依存症や、気分障害、うつ病などと合併しやすい」(仮屋医師)という。

ADHDの人の部屋の例
写真提供=仮屋暢聡医師
ADHDの人の部屋の例

「ADHDの大半は子供の頃に発見されますが、社会生活が営めるために気づかれず、成人して『依存症』を併発して精神科を訪れ、ADHDだとわかるケースが多いですね。医師や弁護士、大企業にお勤めの方もいて知能レベルや職業はさまざまですが、“社会への不適応”によって気づくのです」