ウイルスやバイキンは誰が教えるのか

日本とは異なり、イギリスをはじめ欧州では、学校で行う体育や理科の授業で公衆衛生やウイルス、バイキンなどに関してあまり教えません。もちろん進学校や教育熱心な学校ならちゃんと教えるでしょうが、全体的にウイルスやバイキン、衛生といった事柄が日常的な教育に組み込まれていないのです。

日本だと、赤ん坊の頃から「アンパンマン」のバイキンマンなどに触れますし、親は「バイキンは怖いんだよ。だからきちんと手を洗おうね」と教えます。ところが他の国にはそういったキャラクター自体、存在しません。

ウイルス
写真=iStock.com/urfinguss
※写真はイメージです

日本の病院や歯医者には、子どもがバイキンや病原菌の強さなどを理解できるようにいろいろな絵本が置いてあったり、キャラクターが壁に描かれていたりします。日本では公衆衛生に関して考えることが日常的で、そういう問題は身近なのです。保育園や幼稚園でも手洗いうがいの歌があったり、先生が紙芝居で公衆衛生の重要性を教えたりすることもめずらしくない。だけど、欧州の学校にはそういったものがありません。

どうやらこれらの国々では、公衆衛生は学校や教育機関ではなく各家庭が教えるもの、という意識があるようです。学校でも、ハンカチやティッシュを持っているかという抜き打ちチェックはないし、そもそも先生は子どもの健康状態を気にしません。私立の学校なら服装規定のチェックはありますが、あくまで見た目を保つだけ。日本に比べると、先生はあまり子どもたちに気を配っていない感じがします。

さらに、欧州の学校には保健室がないことも多く、「日本の学校には保健室があって、保健の先生が常駐している」と話すと、すごく驚かれます。一応、保健室に該当するような部屋を設けている学校もありますが、日本の保健室に比べると単なる物置みたいな感じで比較になりません。

また、欧州では普段から「子どもにはグロいものや怖いものは見せない」「子どもたちにショックを与えるべきではない」と考える傾向があります。災害や犯罪の話題もやたらと隠しますし、歴史の授業でも戦争の悲惨さをストレートに伝えません。きれいなところや、前向きなものしか子どもたちに見せないのです。その割に、街には麻薬や暴力があふれまくりなので、隠しても無駄だろうと思ってしまいます。

「健康診断がある」と伝えると驚かれる

イギリスでは、学校で健康診断を行いません。当然、虫歯のチェックもありません。

谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない2 未曽有の危機の大狂乱』(ワニブックス)
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「日本の学校では毎年、健康診断がある」と家人や友人に伝えると、大変驚かれます。イギリスをはじめ、医療費が無料という欧州の国々では、病院で健康診断を受けようとすれば1回に5~10万円もかかるからです。

イギリスなど欧州では、子どもの発育不良や健康的な問題は、すべて家庭の責任です。思い出してみると、私が日本で通っていた小学校では、保健の先生が毎月「保健だより」を印刷して生徒に配っていましたし、肥満の児童には保健の先生が注意し、栄養や運動の指導をしていました。

私は小学校の頃、肥満児だったので実際にそういう指導を受けていました。友人や親類から日本の学校の話を聞く限りでは、いまでもそれほど変化していないのではないでしょうか。

日本では保護者だけではなく、政府や自治体、教育に関わる人々などの健康に関する意識が高いのだと思います。もともと気にしていなかったら予算もつけないでしょうし、カリキュラムにも組み込みません。保健室だってわざわざ造らないでしょう。

イギリスに住んでいると、みんな健康についてあまり興味がないんだな、と感じます。そういう健康への関心が、新型コロナ対策でも大きな差になっているのでしょう。

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