口呼吸で口のなかが乾燥する

口呼吸の悪いところは、それだけではありません。口呼吸をしてしまうと、「口のなかが乾燥しやすくなる」というデメリットもあります。

口のなかが乾燥するとは、つまり、唾液が必要以上に蒸発してしまって、循環する唾液の量が減ってしまうということです。唾液はさまざまな働きで私たちの体を守ってくれています。そして、唾液の大切な役割に「抗菌作用」があります。

小さいころ、親や先生から「ケガをしたらツバをつけなさい」といわれたことがある人もいると思いますが、これは理にかなっています。また、唾液そのものが歯や歯ぐきなどについた食べかすを洗い流す役目もあるので、唾液が少ないと、それだけで口のなかが汚れてしまうのです。口呼吸をすると唾液が減り、ばい菌が繁殖しやすくなって、ウイルスにも感染しやすくなるということです。

このように悪いことだらけの口呼吸ですが、私が考える口呼吸の最大のデメリットは、「口の力を衰えさせる」ことです。

口周りの筋肉がどんどん弱くなる

新型コロナウイルスの感染が広まり、しばらくたってからの話です。とある取材の際にうがいを実演して見せたところ、いつも同席しているPR担当の方に、

「先生、口の力が弱くなっていませんか?」

といわれてしまいました。そうです。私としたことが、四六時中マスクをつけていたせいで、口の周りを弛緩しかんさせるクセがついてしまい、口の筋肉が弱っていたのです。

唇を閉じる、すぼめる動作に使うのはおもに口腔周囲筋こうくうしゅういきんという筋肉で、名前の通り、口の周りを輪っかのようにグルリと取り囲んでいます。

この筋肉が弱まると、口がだらしなく半開きの状態になりやすくなるのです。身体のほかの部分と同じく、筋肉は、使わなければどんどん衰えます。

マスクで息苦しいからと、口を半開きの状態にしていないでしょうか。口で呼吸することが普通になると、マスクを外したときにも口呼吸をするのがクセになり、かえって感染症にかかりやすくなってしまいます。