リーダーは「恐怖」の感情を利用する
逆に、利益を失うときに感じるのが、「恐怖」です。識学では、「恐怖」の感情についてもマネジメントに取り入れるようにしています。なぜなら、人が生きていく上で「恐怖」は大事だと考えているからです。
人は、事故や災害が起こると、恐怖を感じてそれを回避するように行動します。恐怖は、死を避けるための大切なシグナルです。恐怖を正しく認識し、恐怖を回避するような行動をすれば、人間は生きていけます。「いま自分は、何を『恐怖』として感じているのか?」
ぜひ、一度それを考えてみてください。そして、感じなければいけない恐怖の種類を間違えていないかを確認しましょう。
たとえば、課長が自分の身を守ろうと思ったら、「課の成果が上がらないこと」に恐怖を感じなければいけません。「この瞬間に部下から嫌われる恐怖」が優先されているのなら、それは錯覚です。
「今日は機嫌が悪そうだから仕事を振るのはやめよう」
「タイミングが悪そうだから、報告はやめておこう」
というように、目の前のことに恐怖を感じてしまうのは間違いです。ここで考えるべきなのが、先ほど説明した「組織の利益」です。
「組織の利益」が減ることに対して恐怖を感じているのであれば、問題ありません。しかし、そうではなく、「自分がこの瞬間、嫌な気持ちになること」に対して恐怖を感じていたとしたら、リーダーとしてNGです。
その判断軸として、「何に恐怖を感じているか」を自らに問うようにしてください。
危機感のある人、感じない人
10年後、会社が潰れたとしたら、自分は他でもやっていけるだろうか。これからの時代は、そんな「恐怖」も感じることでしょう。「このままじゃダメだ」という危機感があり、それを現在いるところで乗り越えようとすると、「成長」につながります。
率先して勉強したり、業務を改善したりして、自分で考えるようになるからです。自らもリーダーとして、そのように考えるべきだし、部下にもそういう機会を与え続けるのが、いいリーダーの姿です。それを生み出すのが、「いい緊張感」です。
「どう振る舞っても、何も言われない」
「目標を達成しなくても、何も言われない」
そんな優しいリーダーの下では、「いい緊張感」が生まれません。部下が成長せず、チームとして成果が出せなければ、リーダーは評価されず、いずれは会社から必要とされなくなるでしょう。
食いっぱぐれる危険性は、こちらのほうが大きいのです。だからと言って、「恐怖政治をやれ」とは言いません。怖い顔をしたり、言い方を強める必要はありません。あくまで、「いい緊張感」です。