「私にとって、あなたは大切な人だ」ということを伝えるのが大事
——なるほど、こちらがまず素直に心を開いて、誠実に向き合うということが大切なんですね。でも、もし、大切な人がものすごく悩んでいたとしても、こちらがうまくキャッチできないケースもありそうです。
【鹿目医師】もちろん、注意深く本人のSOSを見ていても、医師ですら見抜けない場合が多い病ではあります。防ぎたくとも、結果として、防げないことも多いのも事実です。
しかし、だからこそ、日常的に大切な人に「私にとって、あなたは大切な人だ」ということを伝えるのが大事なのです。「言わなくても伝わっている」ということは通用しないのです。是非、身近な人と支え合うということを意識してみてください。
——今回、前後編にわたって、先生には「コロナ禍で生きるために」という知恵を授けて頂きました。家族や身近な人の声かけで救われる命があるということ、自分自身や親しい人の異変を感じたら、迷わず医療機関に受診してみること、さらに精神科の病院や比較的大きめのメンタルクリニックには精神保健福祉士という職種の人が在籍しているので、病気に関する経済的な問題についても気軽に相談できることなども教えてもらいました。
最後に、緊急事態宣言が続く中、読者の皆さんにメッセージをお願いします。
【鹿目医師】ご存知のとおり、今を生きる私たちは、このコロナ禍で多くの物理的、心理的負担を強いられています。それに伴い、自殺の潜在リスクは過去にないほど高まっていると言えます。重ねて申し上げますが、うつは治療可能な病です。今、悩んでおられる方には、身近な人、行政、医療機関など、誰かとつながるという選択肢を諦めないでいただきたいです。