コロナ鬱に人は些細なことが「自殺のトリガー」になる
前編では「コロナ鬱」に詳しい精神科医・鹿目将至氏に、コロナ禍で増加した自殺者数の背景について聞いた。後編では、引き続き鹿目氏に「自分自身や大切な家族を守るうえで、今、私たちにできること」を教えてもらう。
——以前、先生に取材した記事、「激増中『コロナ鬱』を避けるための5つの予防法・精神科患者の9割以上がコロナ案件」は大きな反響を呼びました。
その中で「コロナ欝対策」として、先生は
(1)自分の症状を冷静に見つめ「これはコロナのせい」と自覚する
(2)ニュースの追っかけをやめる
(3)規則正しい生活をして、できるだけ体を動かす
(4)明るい未来を予測する
(5)感謝の気持ちをもつ
ということを提唱されました。WITHコロナが長く続いていますが、今もこの対策に変わりはありませんか。
【鹿目医師】基本的には同じです。ただ、うつ状態に陥っている人には、もう少し別のアクセスも必要になってくるでしょう。うつ状態の患者さんの主な症状は「気持ちの落ち込み」なのですが、「コロナうつ」はそれに加えて「不安と焦り」という特徴があります。今後の見通しが立たないことから、不安や焦りが強くなり、些細なことでもトリガー(=きっかけ)となって自殺願望が出てしまいやすくなるのです。こうなると、ひとりの力で立ち直るのはなかなか困難になります。
「孤独と絶望」の中……自殺の5つの前兆
——自殺願望ですか……。大切な人がそんな悲しい思いを抱いているとしたら、家族としてはたまらない気持ちになります。やっぱり考え直してほしいですよね。自死を考えている人の言動なり行動に特徴のようなものはあるのでしょうか。
【鹿目医師】自殺リスクを評価する上で、そのリスクが非常に高いとされるのが「孤独と著しい絶望感」です。その中で、自殺の予知徴候として、次のようなものが知られています。
①過去に自殺企図歴がある
②本人が「死にたい」と述べ、自殺念慮があることを認めている
③過去の自殺企図の手段が縊首、飛び降りなど成功率が高い手段である
④最近、家族や友人などで自殺既遂した例が身近にある
⑤今、実際に成功率が高い手段で自殺を考えている