老後資金を増やそうとした50代独身女性は、3年前、銀行員に勧められるまま投資信託を購入した。退職金1500万のほとんどをそれに充てたが、現在、その評価は半額近くにまで下落。ファイナンシャルプランナー・藤原未来さんは「投資は、余剰資金で長期的なスタンスでやるのが基本。長く続けるほどリスクが抑えられて安定してきます」。投資してはいけない人の12の特徴を紹介しよう——。
たくさんの一万円札を手に
写真=iStock.com/Asobinin
※写真はイメージです

銀行員に勧められ…「退職金1500万円を投資」も評価額は半分に

都内に住む50代後半のA子さん(独身)は元気のない様子でこう話し始めた。

「3年前に会社の希望退職に応じ、割増された退職金が1500万円ほど振り込まれたんです。その後、タイミングよく連絡をくれた銀行員の勧めで投資信託を購入。貯金が乏しく、老後資金に不安があったんです。結局、その銀行員に言われるまま、何度も買い増し、買い替えをして、現状、投入した退職金丸ごと1500万円分の投信の評価額は半分強にまで落ちました。コロナ禍で再就職がうまくいかず、アルバイト生活で持病もある今、老後に不安しかありません。銀行は『担当者はすでに転勤した』と言い、全く相手にしてくれないんです」

筆者は3年前にプレジデントオンラインに「母から2000万奪った大銀行の“合法手口”」(2018年2月19日)という記事を書いた。A子さんはこの記事を読み、コンタクトをとってきたのだ。

この記事は、筆者の要介護の実母の晩年に起こった銀行とのトラブルをつづったもの。元本を取り崩して支払われる元本払戻金(特別分配金)が「タコ足配当」であるという事実を理解できなかった母が「利息だけで預金は大きく増えている」と錯覚。結果、銀行の言いなり状態になって売買を繰り返したという顚末てんまつである。筆者は「手数料さえ稼げれば問題ない」と言わんばかりのやり方に大いに憤ったものだ。

あれから、金融庁も「顧客本位の業務運営に関する原則」(2017年3月30日発表)などで、各金融機関の指導・監督を強化しているが、A子さんの訴えを聞く限り、状況は当時とほとんど変わっていないように見える。この点をお金のプロはどう思っているのか。以前、母のトラブルの際、相談したことのあるファイナンシャルプランナー、藤原未来さんの元を訪ねた。

——先生、お久しぶりです。あの後も私の元へも「金融機関に騙された!」という体験談がいくつも寄せられていますが、こうした現状を先生はどうお考えですか?

【藤原未来】金融庁の指導の元、金融機関も改善している面はあるとは思うのですが、末端にまで、その指導が行き届いているかといえば、まだまだかなりあやしい。超低金利時代の今はますます“手数料”で稼ぐしか手立てがないという金融機関側の焦りも関係していますよね。

——母の件で痛い思いをしたはずの私も含め、「儲かる!」あるいは「絶対、損はしない!」といったニュアンスでお金の専門家である銀行員に勧められたら「そうかもしれない」と多くの人が信じてしまう気がします。結果的に“自己責任”とされてしまうA子さんも気の毒です。以前、先生から「一人ひとりが投資を含むマネーリテラシーを上げること」の重要性を教えていただきましたが、具体的にはどうしていいのかがわかりません。