家族や大切な人の「SOS」をキャッチしたらするべき3つの声かけ
——前編で、消えない気分の落ち込みや猛烈な孤独を感じている人は医療機関に頼るように進言されていましたが、そこで医師はどういう診断をするのでしょうか。
【鹿目医師】精神科医は、患者さんがどれほど切迫した希死念慮なのか、どれほど緊急性があるのかなどを自殺リスクの高い/低いで考えます。医療者は患者さん本人のSOSに気付いた場合、死なないことを約束してもらうのですが、約束できそうもない場合には入院などの治療を検討します。しかし、患者さん本人の心に一番響くのは、患者さん自身が大切に思っている人、例えば家族のような人からの声かけなんです。
——身近な信頼している人からの声かけが大切ということですね。具体的には、どういう言葉かけですか。
【鹿目医師】家族や大切な人のSOSを感じたら、以下の3つのことをやってみてください。
1 自殺について、真剣に話そう
自殺を考えている人に対して、家族が「(自殺を話題にすることで本人を刺激し)本当に自殺してしまったら大変だから、話をするのを避けよう」と考えるのは誤りです。その人に対し、その話題と真剣に向き合うことは、自殺を促すことにはなりません。それどころか、思い留まらせる効果があることが分かっているのです。したがって、見て見ぬふりをするのではなく、あるいは「本人のため」と思って黙っているのでもなく、積極的かつ真剣に本人と向き合うことが重要です。ここで、個人間だけの問題で終わらせずに、医療機関への受診に確実につなげることがポイントになります。
2 話すときは「TALK」の原則を用いる
精神科医や精神科看護師が用いる方法に「TALK」の原則と呼ばれるものがあります。
実際の現場では、自殺を図り、救命センターなどに搬送された患者さんと向き合う際などに用いられますが、一般の人であっても十分に活用できるものです。
T(Tell)誠実な態度で真剣に話しかける……「あなたのことを心配しているよ」
「何かあった?」
A(Ask)自殺について、はっきりと尋ねる……「死にたいと思うことはある?」
「どんな時に死にたいと思うの?」
L(Listen)相手の訴えに耳を傾ける……「死にたいくらいつらいんだね」
「あなたの話を聞かせて欲しい」
K(Keep safe)安全を確保する……「一緒にいようね」
「1人じゃないよ」
3 「私はあなたに死んでほしくない」と言葉で伝える
コミュニケーションを取る時には「Iメッセージ」で伝えたほうがいいという説があります。
「アイ・メッセージ」とは、発信する人の「私(I)」が主語になるように伝えること。反対に「YOUメッセージ」とは、「あなた(YOU)」が主語になって発せられるメッセージを指します。一般的に「YOUメッセージ」では、意図はしていないにしても「あなたはこうあるべき」という断定的な響きや「あなたはこうなんでしょ?」という話者の勝手な思い込みや評価が含まれがちです。
それよりも、「私はあなたが生きているだけで嬉しい」「あなたがいると(私は)楽しい」という言い方で、「あなたは私にとって大事な人である」ことを素直に伝えたほうが、相手が受け取りやすくなるのです。