息子には20年間会えていない。できるのはお金を送ることだけ
息子の気持ちが落ち着くまでのほんのいっときだけお願い……。
それが気付けば、20年近くの歳月が過ぎていました。この間、男性は息子と1回も会っていません。会いたくなかったわけではありません。義母宅へ出向いて息子の部屋の前まで何度も行ってドアに向かって声をかけたのですが、息子は返事をせず、顔も見せなかったのです。
ただ、男性が義母宅を訪ねたのは最初の数年だけです。義母宅ですから、義母の留守中に訪ねるわけにはいきません。義母の許しを得られた日時に義母宅を訪ね、義母を横にしてドアの外から話しかけるというスタイルが続き、いつしか息子の部屋を訪ねなくなっていました。ふと声が聞きたくなって携帯電話にかけても、むなしくコール音が鳴るだけでした。
男性は息子に会えなくても、生活費はきちんと面倒をみるつもりでいました。会えなくなるとは思っていなかった頃、男の子一人分の食費がどれくらいかかるのかよくわかりませんでしたが、訪ねるたびに3万円、5万円と包んでいたのです。そのうち、電気代や水道代もかかるのだし、成長に合わせて洋服も買うだろうからと、1カ月あたり10万~20万円ほどは届けていたそうです。
男性には十分な収入があり、貯金もできていました。登校しない日が続いて中高一貫校の高校への進学はかなわず、学費の負担がなくなったこともあって、財布を気にせずに息子のための支出ができていました。大きな負担感はなかったのではっきり記憶しておらず、記録も残していないので、実際のところ金額は不明です。
そのうち、パソコンを買ったから30万円、何かを買い替えたから60万円という請求が義母からくるようになりました。男性はもっと安価なもので十分なのではないだろうかと思いながらも、たとえば「車を買って」とおねだりされるより安上がりだし、息子の世話をしてもらっている負い目もあって、言われるままに支払ってきました。
コロナ禍で送金する経済的ゆとりがなくなってきた
それが昨年、コロナ禍となってから雲行きが怪しくなってきたのです。
もともと男性の会社は数年前から売り上げが減り始め、税理士のアドバイスもあって報酬を手取り年収800万円から500万円に減らしていました。生活費月30万円を除く約10万円を息子に送金しており、赤字家計ではないものの、ゆとりはありません。会社の赤字補てんのために貸した個人の預貯金を回収できる見込みはなく、退職金の受け取りも難しい状況です。会社の売却を検討中ですが目途が立たず、老後のことを考えると預貯金1000万円では心もとないと男性は考えています。
現在の経済状況を整理すると次のとおりです。
本人:33歳男性、無職、祖母宅在住
父(相談者):60歳、会社経営、一人暮らし
母:本人が中学3年生時に死亡、一人娘
祖母:83歳、本人の母方の祖母、祖父は他界
【資産状況】
父:持ち家戸建て(ローン完済)、預貯金1000万円
本人:なし
祖母:持ち家戸建て、預貯金額不明
【家計状況】
収入
父:500万円/年手取り
本人:なし
祖母:不明
支出
父:360万円(月額30万円)
本人:120万円(月額10万円)
祖母:不明