気づいたらそこは悪徳商法の巣窟
「最初はあのお店がそんな場所だとは、まったく知りませんでした」
繁華街にある、小ぎれいでリーズナブルなダイニングバー。カクテルは1杯300円。食事の味も悪くない。何も知らなければ、単にコストパフォーマンスの良い便利な店だろう。
ところが、私が取材したAさん(20代・女性)が出入りしていた店は、経営者から従業員、常連までが悪徳商法集団の構成員という、魔窟のような場所だった。
Aさんが「彼ら」と関わるきっかけは、ありふれた路上に潜んでいた。
「すみません、このあたりでおいしいラーメン屋を知りませんか?」
ある日、友人との食事から帰宅していた彼女は、路上で男女二人組に声をかけられた。親切心から近場のラーメン店を教えた彼女は、話の流れでLINEを交換したという。
その翌日、路上で声をかけてきた女性から、食事を誘うLINEが届いた。予定の空いていたAさんは、誘われるままに食事の約束をした。場所として指定されたのは、繁華街の中心地にあるダイニングバー。立地と店構えの割にメニューが妙に安かったが、格別味が悪いわけでもなかった。
Aさんはその後も食事に誘われ、気づくとその店で行われるパーティーに参加するようになったという。参加者には起業を目指している人が多く、店の経営者という男性を紹介された。男性は客にひどく慕われており、その周りには会話を求める人の輪が出来上がっていた。
しかし、パーティーに通うなかで、Aさんはある違和感を持ったという。
「何というか、店員と常連の仲が良すぎるんです。不思議に思って聞いてみたら、常連が店員として働いていることがあると説明されました。そんなものかと思っていたんですが、話を聞くうちに、常連も店員も、なぜか皆同じ場所に住んでいることが分かりました。本当の理由が分かったのは、入会後だったのですが」