「自己投資」の正体は幹部への上納金

入会後はコミュニケーションやビジネスマインドに関するセミナーに毎週末参加させる。セミナーの内容で特徴的なものが「チームビルディング」と「自己投資」である。

「チームビルディング」とは、「起業するにあたってはチーム作りが重要なため、直下9人・総勢50人のチームを作り上げることが必要である。」と伝え、勧誘手法を叩き込むものだ。「環境」では、上記のチームを作り上げるとオーガニックショップの出店が「許可」されるが、これを実現する会員はほとんどいない。実現した場合も顧客のほとんどは「環境」の構成員である。

また「自己投資」とは、「起業のためには月15万円程度の『自己投資』が必要」と伝えるものだが、具体的な内容はまだ伝えない。

ひととおりのセミナーが終わると勧誘する側に回らせ、毎日深夜にまで及ぶ勧誘活動や師匠への報告を行わせて疲弊させていく。

そうして3カ月ほど経ち、完全に組織に染まった時、初めて「自己投資」の内容を明かす。15万円の自己投資の正体。それは、「師匠の店舗から15万円分のシャンプーやサプリメントを毎月購入する」ことなのだ。

家計簿を記入する日本の女性
写真=iStock.com/kazuma seki
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一般的なマルチ商法ではないが…

構成員が勧誘した人物が自己投資を行った場合、「自己投資に使えるポイント」が付与される。このため構成員は自己投資の負担を下げ、チームを作って出店を許可されるため勧誘にいそしむこととなる。

つまり彼らは、構成員に勧誘を行わせ、商品販売を行うピラミッド状の組織を作るビジネスを行っている。これがマルチ商法、つまり特商法における連鎖販売取引にあたるかどうかは解釈が分かれるところだ。

彼らの特徴は月15万円もの買い込みを行わせることと、目標が起業=オーガニックショップの出店に置かれること、そしてビジネスの正体を徹底的に隠すことであり、筆者はこれが問題であると考えている。

一般的なマルチ商法であれば勧誘の早い段階で商品説明やデモを行うため、その企業の名前や業態を知ることができる(そもそも事前に企業名やマルチ商法であることを示さず勧誘するのは違法である)。

ところが「環境」の場合、単に起業を目指す集団であるとだけ伝えて入会させ、完全に染まりきるまで核心を伝えない。これは徹底しており、勧誘の場では組織で扱っている商品は絶対に見せず、自己投資の正体を明かす前にもその説明は行わない。勧誘の途中でターゲットから外れ、飲み会やパーティーの主催が「環境」だったと気付かないままの人も多くいるだろう。

勧誘の毎日で交友関係を「環境」周辺に限定させ、疲労で思考力を鈍らせてから初めて月15万円もの買い込みを勧める。この状態で15万円の自己投資を選択したとして、果たして「本人の意志」であると言えるだろうか。