ちなみに、『孤独のグルメ』原作者の久住昌之さんも、1月13日に「俺の食に密は無い。がんばれ、飲食業界 井之頭五郎」とエールを贈り、20万件を超えるいいねがつきました。それだけ、ソロ外食をしている人達が多いという証拠でもあり、多くの人たちがソロ外食の良さを知っているということでもあります。
「1人の食事」が多くの人の生活を支えている
世界で一番早く外食産業が栄えたのは日本だと言われます。1657年、明暦の大火で江戸が焼け野原になった後、再開発のために全国から大工など職人衆が集結しました。一旗あげようと農村の次男坊、三男坊も集結、それらに対して商いしようと商人も集結。江戸は、働き盛りの男過多の町になり、そのニーズに対して生まれたのが、惣菜煮物を扱う店であり、居酒屋であり、蕎麦などの屋台でした。
男だからといって自炊できないわけではありませんでしたが、当時薪代は高額で、自炊するより外食した方が合理的だったのです。そこから今に続く寿司・天婦羅などの食文化も生まれました。自炊しない独身男が大勢いたからこそ、外食産業と日本独自の食文化が花開いたのだともいえます。
独身たちが自分の快楽としての食を楽しむことが、結果的には、そのお店やそこで働く人たちを支えています。それだけではなく、生産者や加工業者、納入を担う物流業者、さらにはそれらの人々の家族の生活まで、知らない間に支えているといえるのです。1人で食事をしていても、そのテーブルは多くの人たちとつながっています。
政府もメディアも、そうした「ソロ外食」の貢献にはまったく触れようとせず透明化されていますが、現状の飲食店の窮状を救うのは紛れもなく「1人で黙ってソロ外食をする」彼らの行動です。日本中にはたくさんの「目には見えない」井之頭五郎が存在します。これまでも飲食業界を支えてきたし、これからも支え続ける「1人ずつだけど大きな力」なのです。