それでも、こうした反論もきます。

「ソロの外食費が高いのは分かったが、独身だからといって、全員が1人で外食しているわけではない。そもそも外食は友達や恋人など複数で行くものだろう」と。

どうしても、「1人で外食なんてする人間がいるわけない」という固定概念から脱却できないようです。自分がそうだからといって、世の中のすべてがそうだと考えてはいけません。

ひとり暮らしの独身にとってソロ飯は日常

2020年に、僕が1都3県の20~50代未既婚男女(n15644)に対して行った調査では、単身者の場合のソロ飯率は平均9割に達します(朝食を除いて、1週間当たり何回1人で食事をするか、の割合)。家族と同居する親元に住む独身者は男性5割、女性4割程度に下がりますが、それでも既婚男女のソロ飯率(夫婦のみ家族で3割、夫婦と子家族で2割程度)と比べれば、独身男女のソロ飯率が高いことは明らかです。

以上の家計調査に基づく月間の外食費とそれぞれの世帯類型別のソロ飯率をかけ合わせれば、ソロ外食の単価が推定できます。その単価と2015年国勢調査の配偶関係別年代別人口をかけ合わせれば、独身者(単身者に加えて親元独身者含む)と家族の外食市場規模とそのうちのソロ外食市場規模がどれくらいあるかが試算できます(※20~50代までの人口であり、個人消費以外の外食費は含まないので、事業者ベースの外食市場規模とは一致しない)

ソロと家族 外食市場規模比較推計

独身のソロ外食市場規模は3兆円以上

年間ソロ外食の市場規模約4兆円のうち、4分の3に当たる3兆円以上を独身が占めています。3兆円のうちの3分の2は独身男性です。ソロ外食に限らない総外食市場においても独身は市場全体の6割弱もあり、うち独身男性が68%を占めます。外食産業において独身男性が貢献しているかが分かると思います。外食市場において、今はもう家族は少数派であり、今後ソロ社会化が進めばさらに減ります。

1人で食事をしていることを「ぼっち飯」だのと揶揄したり、「1人でご飯を食べるのは弧食である」と社会問題化したり、「1人飯は食事ではない、食餌だ」などと心ない発言をする人もいます。もちろん、家族や大切な仲間たちと食事をする楽しさは否定しません。しかし、だからといって、「1人で食事をすることが楽しい」という人達もたくさん存在します。