頼りのトランプ氏が大統領を退くことに焦っている
軍事パレードには「北極星5」と表記された弾道ミサイルが初めて登場した。昨年10月の軍事パレードで公開された新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星4」の改良型だ。胴体が太くなり、弾頭も長くなっている。多弾頭化と射程延長を施した可能性がある。
しかし、軍事的な脅威とはいえない。北極星4、5とも発射実験は確認されていない。つまりハリボテなのだ。前回のパレードに登場した新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)は欠陥でも見つかったのか、姿を見せなかった。
金正恩氏はこれでアメリカを威圧したつもりなのだろうか。米朝首脳会談をシンガポール(2018年6月)とベトナム(2019年2月)で行い、頼りにしていたトランプ氏が大統領を退くことにかなり焦っているように思える。
経済難の責任をとって実妹の降格人事に踏み切ったが…
なかでも興味深いのはあの実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏の扱いである。朝鮮労働党大会の人事では、党第1副部長の金与正氏が政治局員候補から外された。政治局員候補は指導機関のメンバーで、そこから外れるのは降格人事である。
金正恩氏は金与正氏を昇格させるとみられていた。金与正氏が北朝鮮の国政に貢献し、昨年10月の党創設75年行事も総括していたからだ。
それだけに予想外の人事だった。なぜ、金正恩氏は妹を降格させたのか。前述したように北朝鮮は経済政策に行き詰まり、国民は貧困にあえいでいる。その経済難を招いた責任を問う姿勢を国民に示すため、実妹の降格人事に踏み切ったのだと、沙鴎一歩は考えている。
しかしながら、金与正氏は依然としてナンバー2の地位にある。138人の党中央委員の21番目にその名を連ね、党大会の間は終始、金正恩氏に近い席にいた。伝えられたテレビ映像にも金正恩氏の後方に座る彼女の姿が映し出されていた。