自助・共助・公助の精神に基づく「第4のメガバンク構想」

【北尾】自得というのは、自らを得ると書きます。例えば今の地方銀行が、どういう世界に置かれているのか。これから10年後がどうなるのか、自分のことを自分でよく分からないまま経営していると、茹でガエル(※)になってしまうかもしれないですね。だから徹底的に現状を把握し、そのためにいろいろな分析をし、人の意見を聞き、その上でどうやって自分たちを変えたらいいかを考えていかないといけないですね。

※茹でガエル ビジネス環境の変化に対応することの重要性、困難性を指摘するために用いられる警句のひとつ。

【田中】尽心はどうでしょうか。実際の地銀の経営陣は、そこから再スタートしようという気概はお持ちでいらっしゃるのか、あるいはもっと重要なのは、金融DNAを、スタートアップ企業のようにDay1にまで刷新しようとか、そういう気持ちは一緒にお仕事されていてお持ちでいらっしゃると思われますか。

【北尾】私が掲げた“第4のメガバンク構想”は、メガバンクが3つあるから4つ目という意味ではなく、一種の共同体だと考えています。上杉鷹山公が唱えられた三助の精神(※)。自助、共助、公助です。この精神で、自らを変えていくということです。

※三助の精神(思想) 江戸時代の米沢藩主上杉鷹山が唱えた思想。自分のことは自分で守る「自助」。そして地域で助け合う「共助(互助)」。さらに行政がカバーする「公助(扶助)」の3つからなる。

SBIホールディングス 北尾吉孝代表取締役社長と立教大学ビジネススクールの田中道昭教授

銀行ごとにATMを変える必要があるのか

【北尾】変えようという強い意志を持たないと自らを変えることはできません。人間は、自らを築くのは自分自身でしかない。何度、人が言っても変わらないですね。まずそこの部分で、徹底的に自らを築くという強い意識を持ってもらう。これを私は皆さんにお願いしています。その意識を持たれた上で、我々なりに外部からの分析をします。そして銀行側でも内部で自ら分析をしてください、それを合わせて正しい処方箋を書きましょうというやり方ですね。

そして共助というところでは、例えばATMはそれぞれの銀行で別々に持っているのが現状ですが、共助という観点では、皆が同じATMを使って同じ通帳で良いのではないですかということです。今、通帳が各行で違うから、ATMも別になっているわけですよね。そんなことをする必要はなく、ましてやATMは、キャッシュレスの世界になっていくと、いつまで使い続けるかも分かりません。ですからその共助、みんなで同じようなシステムを使うのですから、システムの費用など、共通化できるところで共通化しましょうということです。

公助の部分は、これは今政府や地方公共団体も随分と地方創生、地域行政の強化という中で、色んな配慮をされていますよね。それはそれでされたらいいと思います。