トカゲが尻尾を切るのは、危機を感じた時

【田中】そういう意味では、まずは最初の自助ありきだと思うのですが、その自助ありきやDay1、あるいは今北尾社長がおっしゃった上杉鷹山の自助・共助・公助の三つというのは、実はケネディ大統領の有名なフレーズ、“Ask not what America can do for you, ask what you can do for your country.”(※) も元々参考にしたというぐらい、まずは問うべきは、「自分は何ができるのか」が先なわけです。それを自分自身に問いかけることができるような人たちなのでしょうか。

※Ask not what America can do for you, ask what you can do for your country.
1961年第35代米国大統領に就任したジョン・F・ケネディの大統領就任演説の有名な一節。「わが同胞、アメリカ市民の皆さん。国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。」という意味。

【北尾】変わろうと追い詰められた時に人間は変わることができるのです。例えば生物の保護色も、トカゲが尻尾を切るのも、追い詰められて危険を感じて、危機を感じた時にそういう生態的変化が起こるわけです。例えば、100年の歴史があるような銀行で、たまたま自分が今頭取だけど自分の時には潰せないと、こういう気持ちです。なんとかしなければと、行員たちもみんなが思う。それがひとつの強い気持ちになり、ひとつの意志となり、同じベクトルを向いた意志となってくる。そこが契機となって変わっていくのだろうと思います。何も契機がない状況の中で変われと言っても、ぬるま湯に浸かっているほうが楽ですから、中々変われない。

今から「3年後」を考えなければ駄目だ

【田中】そういう意味ではようやく「天の時」が来たというところはあるのでしょうね。

【北尾】だと思います。このコロナ禍で、公助で貸し出ししても、3年間保証ですということになり、どんどん貸し出しが増えました。3年後、貸した企業が右肩下がりになれば、またシリアスな問題になっていくわけです。

私はもう3年後を考えないと駄目ですよと非常に警鐘を鳴らしています。我々の対応の仕方も3年後に向けて、銀行だけではなくその銀行の貸出先である企業、中小企業がどういう風にして収益力を上げていくか。そちらの方にかなりウェイトをかけています。

【田中】そこがないと、そもそも地銀の永存もないですよね。

【北尾】だから私はまず東和銀行と地元企業を支援するファンドを作り、そのファンドで色々モニタリングをし、資金的な援助をしながら、地方企業を助けていく。