当座預金に年0.1%の上乗せ金利を付けるというが…
地域経済を安定化させながら地銀再編を進める——。そんな菅政権の地銀再編策の輪郭が明らかになってきた。
日本銀行は11月10日、政策委員会の通常会合で「地域金融強化のための特別当座預金制度」を導入することを決めた。地銀と信用金庫を対象に日銀に預ける当座預金に年0.1%の上乗せ金利を付けるというものだ。
適用期間は今年度から2022年度までの3年間。ただし、上乗せ金利を受け取るには、以下の2つが要件になる。
②経営統合等により経営基盤の強化を図ること
日銀の決定に対して、加藤勝信官房長官は11日午前の記者会見で、「政府として地域銀行については人口減少による経営基盤が厳しい中で自ら経営改革を進める地域に貢献することを期待しており、日銀も政府と認識を共有した上で、こうした制度を導入したと理解している」と述べた。
菅義偉首相は「再編も一つの選択肢になる」と踏み込んだ発言
菅義偉首相は9月の総裁選の過程で、「地方の銀行について、将来的には数が多すぎるのではないか」と語り、「再編も一つの選択肢になる」と踏み込んだ発言をしている。今回の日銀の決定は、この菅首相の意向を踏まえた措置と言っていい。
その手法はまさに0.1%の金利上乗せという「アメ」と、経営統合という「ムチ」の使い分けであり、「菅首相が強調する“自助”を地銀に求めることを象徴する施策」(メガバンク幹部)と受け止められている。
ポイントはこの措置が期間3年の時限措置であることにある。「3年以内で地銀・信金は答えを出せといっているようなものだ」(同)。
背景には地銀が置かれた厳しい収益環境がある。
上場する地銀78行・グループの2020年4~6月決算は、連結最終損益が全体の6割に当たる48行で前年同期に比べて減益または赤字になっている。超低金利が継続し、預貸業務で収益を出しにくい環境が続いているためで、さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴い、与信費用もじわじわと上昇に転じつつある。