成功体験を忘れ、次の世界に行く

【田中】なるほどですね。さすがに謙虚でいらっしゃいますね。

【北尾】この時流に乗るというのは、一時点での成功体験にあぐらをかいていたら絶対にダメです。成功体験は忘れ、次の新しい世界に行く。だからさっきおっしゃっていただいたように、例えば四半期ごとの決算発表での私の発表の中には何か常に新しいことがあるはずです。

【田中】ありますね。

【北尾】ええ。それはその3カ月間で、もう新しいことをやろうとしているわけです。

【田中】同じことをお話しされていても、アップデートされていますよね。

【北尾】そう。そこに改善や進化がないといけません。

地銀が「自己維新」するために必要なこと

【田中】そういう意味で「自己維新」(※)を次のキーワードにさせていただきたいのですが、自己維新というのは北尾社長が書かれている本の中でも、安岡正篤先生の著作を北尾社長が解説されている本の中にも出てくる概念です。尽心、知命、立命というプロセスから構成されている。

※自己維新 歴代首相の指南役で北尾氏が師と仰ぐ安岡正篤先生が提唱する、君子(人格者)の重要な条件として挙げている概念。尽心(心の限りを尽くすこと)、知命(天命を知ること)、立命(自己の運命を確立すること)の3つの要素からなる。

自己維新は、おそらく今手掛けようとされている地方創生にも非常に重要な概念だと思います。地銀が本当に自己維新していくためには、尽心・知命・立命が非常に重要になってくると思いますが、今これからやられようとしている地銀との提携・共創、地銀の再生を自己維新、尽心・知命・立命というキーワードで読み解いていただくと、どういうプロセスになるでしょうか?

【北尾】まず尽心というのは心を尽くす、ですね。心を尽くすというのは一生懸命になって、徹底的に現状を分析し、それにどう対応するかを考え抜くことです。

【田中】自得(※)ということですね。

※自得 自分の努力によって自らを徹底的に理解すること。体験を通して悟ること。