「トヨタウェイも、書類を配っておしまいだった」

1990年代以降、「トヨタ基本理念」(1992年)、「トヨタ行動指針」(1998年)、「トヨタウェイ2001」(2001年)など、いくつかの新しい理念が策定された。豊田社長の側近である小林耕士取締役は「過去、トヨタウェイとかいろいろつくられたが一つも徹底されなかった。書類を配っておしまいだったからだ」と指摘する。そのうえで「番頭」を自任する小林取締役が社長と役員、社員との橋渡し役となって、社長の思い、考えを伝えるとともに、社員の考えを会社の戦略に盛り込んでいく役割を担うという。

小林耕士取締役
写真提供=トヨタ
小林耕士取締役

もちろん豊田社長自らも社員に何度も経営理念を語り掛け、それを受けて社員が考えた施策を素早く会社の新しい戦略に盛り込むという実績を積み重ねることで、経営理念が根付いていくのだろう。それを経済環境や業績に関わらず、愚直に続けるしかない。

豊田社長は「その利益をどう使うんだ、何のために使っているんだ、どういう意志でやっているんだということを、厳しく批判も含めて指摘していただきたい」とも言う。

日本最大の企業が「幸せの量産」を持続的に実行できるかどうかは、トヨタ自身の努力とともに、消費者、株主など多様なステークホルダーの絶え間ないチェック機能にかかっている。

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