今、中国、韓国ではユニクロがナンバーワンショップになりました。地元の店よりも、ユニクロの店の方がはるかに多い。これをさらに進めていく。

本書にあったエピソードですが、トヨタのケンタッキー工場の従業員が進んでワシントンまで公聴会を見に行くでしょう。(2009年の)リコール問題で豊田章男社長が窮地に立っているのを我慢できずにワシントンまで行く……。

アメリカの従業員がここまでやるなんてことは普通、ありえない。

僕は豊田喜一郎さんという創業者が立派なんだと思いました。「人間は仕事をする上では平等だ」という意識を現場に植え付けていたんでしょう。世界で成功するには現場の平等を忘れてはいけない。

僕らもトヨタと同じように現場の平等を強烈に意識しています。ですから、中国と韓国だけでなく、アメリカでも東南アジアでもヨーロッパでもナンバーワンになれるでしょう。

「洋服の常識を疑う」という日本人の強み

日本に生まれてよかったと思っています。多くの日本人は忘れているんですけれど、日本は世界一の繊維の輸出国だったんです。品質のいいものがどこよりも安く世界に出ていった。

トヨタの織機が生まれたのも繊維産業が確立していたからでしょう。繊維産業にはさまざまな技術が蓄積されています。トヨタが自動車を作れるようになったのも織機を作っていたからですし、スズキだって元は織機製造業です。インドのタタ財閥は元々、綿紡績ですし、韓国のサムソンは第一毛織から出発している。どの会社も繊維技術をもとにして会社を大きく成長させていった。

産業用ミシン
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繊維産業は決して遅れた産業ではありません。液晶、グラスファイバー、炭素繊維……、先進的と言われる技術の根っこにあるのが、繊維産業が作り出した技術です。その最先端を知っているのが日本人です。

もうひとつの利点は客観性です。日本は着物文化だから洋服というものを客観的に評価して作ることができる。洋服の常識を疑いながら、本質を追求して製品にすることができる。アメリカやヨーロッパの人は洋服に対して、客観的に見ることは難しいでしょう。ファストファッションという業態を考え出すことはできても、ユニクロというカテゴリーを創出することはできなかった。

僕らは今、世界中でポジションを取るコンセプトを確立しました。世界初の洋服のグローバルカンパニーになる。「Made for All」。世界の人々にライフウエアとしての服を提供するんです。