「インスタやってますか?」が合言葉

こうしたミレニアル世代は、スマホで寿司の写真や動画を撮りながら食べるのも特徴です。ミレニアル世代の特徴として、「周りからどう思われているかを気にする」「モノよりもコト(体験)に対してお金をかける」「必要なものであれば、高くても質がよいモノにはお金を惜しまない」などの傾向があります。

質の高い感動体験を求めて一流寿司屋に足を運び、それを思い出としてSNSで写真や動画を周囲に共有することが、この世代にとってのイケてる価値観なのです。実際に、寿司屋で出会った同世代の方々とも交流することは多々ありますが、合言葉は「インスタやってますか?」です。

寿司職人に囲まれた寿司リーマン氏
提供=寿司リーマン
寿司職人だけを集めた「寿司リーマン会」も実施。インスタをやっている寿司屋も多い。写真左下が寿司リーマンさん。

例えば、熊本県の寿司屋にひとりでランチに来ていた福岡在住の29歳の男性と交流がありました。ブランド物のハンドバッグを持ち、会計を気にせず高い日本酒を飲みまくる彼は、不動産会社社長の息子さんとのこと。全国の一流寿司屋を食べ歩いている同士として意気投合し、その場でInstagramを交換しました。そしてその日のディナーでもたまたま同じ寿司屋を予約しているという奇跡が起こり、今では一緒に全国の寿司屋を定期的に食べ歩く仲間になっています。

最近増えている、ちょっと怪しい若者たち

また、最近、予約困難店で「ちょっと怪しい若者たち」の姿を目にすることも増えています。エグザイルのようなイケイケ系の風貌で、「GUCCI」や「BALENCIAGA」などと大きく書かれた文字がプリントされた、いかにもなブランド服を身にまとっている20代前半の男性グループです。彼らの会話内容を聞いていると、「ビットコイン」「アフィリエイト」「FX」などの単語が頻繁に出てきます。こうした「働かずに不労所得を得て自由に暮らしたい」というコミュニティの中でそれなりに成功した若者が、一種のステータスとして、一流寿司屋に足を運ぶのかもしれません。

「お店にお金を落としてくれるのはいいけど、ただ騒いで帰るならもう来ないでほしいな」とぼやく大将もいます。年齢や職業にかかわらず、目の前に置かれた寿司としっかり向き合い、真剣に味わうことが、一流寿司屋でのマナーです。客側の私たちも、そうしたお店へのリスペクトを忘れずにいたいと思います。