同調圧力に屈しないためには理解者が1人いればいい

人は、他者と違う行動をするとどうしても不安に陥りやすく、みんなと同じ行動をすることに安心感を抱きます。「アッシュの同調実験」は、まさに人間の不安定さを浮き彫りにした実験であり、一個人が“変わった人”で存在することの難しさを伝えていると言ってもいいでしょう。

裏を返せば、良き理解者が1人でもいれば、自信をもって行動できるということ。先のアッシュの実験では、すべての回で被験者と同じ線を選ぶ人(つまり味方)が1人いると、同調する確率は5.5パーセントまで減少し、本来の正解率に近づいています。

あなたのことを理解できない人は無意識に多数派の意見に従っているだけと割り切り、良き理解者を見つけることが大切というわけです。

なぜ占い師の言葉はよく当たっていると思うのか

次に、批判的な意見を投げかけられたときの対応について考えてみましょう。

「だからお前はダメなんだ」と、そんなふうに言われると、「やっぱり自分は使えない人間なんだ」とひどく落ち込んでしまうもの。

思考に没頭する若いビジネスウーマン
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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しかし、よくよく考えれば誰しも“ダメ”なところはあるわけで、「お前はダメだ」と言われて思い当たらない節がない人などいません。

占い師に、「アナタは真面目だけど、どこか抜けているところがある。でも、秘めている野心は素晴らしく、誰かを放っておけない優しさもある」と言われれば、ほとんどの人が「そうかも」と思ってしまうのではないでしょうか?

誰にでも該当する曖昧な言葉を、自分だけに当てはまるものだと捉えてしまうことは、「バーナム効果」と呼ばれる心理学の現象の1つです。

バートラム・フォアという心理学者が20世紀半ばに行った、バーナム効果を世に知らしめた実験があります。

自分に都合の良い分析ほど信じやすい

実験では、学生に心理テストを実施したのですが、その結果を1人1人の診断結果に見せかけて、じつは全員に同じ内容の結果を渡し、学生たちの心理を調査しました。

心理テストの診断結果の内容は、「あなたの性格には欠点があるがふだんはうまく対処している」「あなたにはまだ上手に発揮できていないたくさんの能力がある」といった誰にでも当てはまるようなものでした。

そして、その結果が「どれくらい正確に自分に当てはまっているか」を学生たちに5段階で評価してもらったところ、平均で4.26という結果につながったのです。

面白いほど、全員がその分析内容が正確だと思い込んでしまったわけです。また、内容が自分に好都合なときほど、正確だと思い込む傾向もわかりました。

占い師も使う「バーナム効果」とは
※出所=堀田秀吾『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)

人は、曖昧な言葉をかけられると、その言葉が自分に当てはまると思いがちです。ですから、具体的な指摘にかける「お前はダメだ」「お前は甘い」といった、誰にも当てはまる批判的な意見に対しては、思い悩む必要はありません。逆に、自分にとってうれしいことを言われたら、それは素直に受けとりましょう。

人間はとても都合の良い存在ですから、「誰だってそうじゃないか」、そう割り切って次に進めばいいのです。