仕事の指示をしたときは「わかりました」と答えるのに、その通りに仕事をしない、相談せずに勝手に進めてしまう——。どうにも話が通じない人に何かを伝えようとする苦労は計り知れない。心理学博士として多くの著書がある榎本博明さんが、そんな相手にもイライラしなくて済む対応策を教えてくれた。
※本稿は、榎本博明『面倒くさい人のトリセツ: 職場の“ストレス源”に翻弄されない知恵』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。
どうにも話が通じない人の正体
なにをいっても暖簾に腕押し。こっちのいうことが、まるで通じない。そんな人が身近にいると、しょっちゅうイライラさせられる。仕事を頼んだはずなのに、なにもしていない。なんでやっていないのか理解に苦しむ。書類を修正するようにいったはずなのに、まったく修正できていない。なんで修正していないのか、その理由がわからない。
なにかにつけてそんな感じで、ふつうはそれで通じるはずの指示や依頼が、なぜか通じないことがしょっちゅうである。常識が通じない。言葉が通じない。「そこまで細かく具体的にいわないとダメなのか?」と呆れるほど話が通じない。さらにいえば、はっきり具体的に伝えたはずなのに、ちっとも通じていない。
このタイプとしばらくかかわっていると、その謎の正体が見えてくる。こちらの指示に対して、「わかりました」と口ではいうものの、なぜか無視して、それを怠る。それでも、わざと無視している感じではない。そこで、よくよく観察してみると、「わかりました」といいながらも、「?」というような表情をしている。こちらのいうことが、わからないのだ。こっちの指示をわざと無視したり、サボったりしているわけではない。指示された「内容」がわからないのだ。べつに難しいことを指示したわけではないし、わかりにくい言葉を使ったわけでもない。それでも、こっちが指示した内容が理解できないのである。