またクルトガの大ヒットに、巧みなコミュニケーション活動が少なからず寄与している。例えば、商品のネーミングである「クルトガ」は中高生に覚えてもらえるような機能面のわかりやすさを訴えたものだ。実際、命名に携わった斉藤氏によると、「歯車が回るはクルリ、芯がとがるはトガル。特徴を表すにはこれら2つを合わせるしかないということで商品名を決めました」とのことだ。

一見単純な命名法といえそうだが、ここに至るまでには非常に難航し、500~600の案が俎上に載せられたという。この機能的な特徴をわかりやすく表現したネーミングのお陰で、小売店頭ではブランド指名買いが行われるようになったそうだ。

さらに小売店頭での情報発信にも余念がなかった。同社では画期的な新製品の中身を理解してもらうために、サンプル商品を配布し、専用什器をつくり、ホームページで発信している動画をDVDで流し、商品の特徴を説明した手のひらサイズの小冊子を並べた。

このうち専用什器はクルトガエンジンをモチーフにしてつくられたもので、実際、模型のエンジン部分が太陽電池で回転するようになっていた。これはアピール性の高いもので、エンドに置いてもらうことを意図して5000セットを全国の文具店に配ったという。なんと1年以上経過した現在でもこれを設置したままの店もあるとのことで、その効果の高さがうかがえる。

成熟産業、成熟商品であることを嘆いてはいけない。今回のケースは、商品開発の原点に立ち返り、研究開発、組織づくり、マーケティング活動に入念に取り組めば必ず「活路」があることを示してくれているのだから。

※すべて雑誌掲載当時