プロボノから企業が学べることがある

富永さんは語る。「リーダーシップというと、『一人でチームを引っ張っていく力』と考える人も多いかもしれません。でも最近は、誰か1人がリーダーシップを発揮するのではなく、チームメンバー全員がそれぞれでリーダーシップを発揮する『シェアド・リーダーシップ』が重要だと言われます。職位や指揮命令系統がないチームで、短期間に成果を出さなければいけないプロボノは、まさにシェアド・リーダーシップを発揮しないとうまくいかない活動。実地でそうした体験ができるのは、プロボノに参加する大きな意義だと思います」

企業のような人事評価や給与などのインセンティブがないプロボノで、協力して高いアウトプットを出すには、一人ひとりがやりがいを持ち、楽しく参加するための仕組みが必要だ。富永さんは、こうしたプロボノの活動をヒントに、社内でも、社員の働き甲斐を高めるための施策として、新たな取り組みを始めたという。

全社的に希望者を募り、役職や所属部署を超えた数人のチームを作ってもらい、それぞれが考えた3~6カ月のプロジェクト活動を行ってもらうというものだ。社員との信頼関係の構築を目的とした経営者を囲むスモールミーティングを開催する活動や、社会貢献活動などを通して仕事を見つめなおす機会を模索する活動など、すでにいくつかのプロジェクトが生まれているという。

プライベートでは、新たな目標を見つけた。「NPOの多くは、ヒト・モノ・カネのすべてが不足しているうえ、課題の優先順位がなかなか整理しきれていないのではないかと思いました。そうした悩みは、中小企業と似ていると気付きました」(富永さん)。これまでの会社での経験に、新たなスキルを加えたら、もっと困っている組織・団体に役立つのではないかと考え、中小企業診断士の資格の勉強を始めたのだ。

自身のスキルアップを考える上でも、会社で成果を出す上でも、プロボノからさまざまなヒントを得ている富永さん。「本当にプロボノに感謝なんです」と笑顔を見せ、会社の中でも外でも、多くの人がプロボノを経験できる機会が増えるような活動もしていきたいと展望を語った。

【関連記事】
まもなく絶滅する「普通のサラリーマン」を待ち受ける三重苦
出口治明「日本人が起業を避けてサラリーマンを続ける根本原因」
「そんな小粒のビジネス…」寿退社で起業を目指した私の心を打った上司の意外な一言
人事は気づいてない! 入社半年で「優秀な日本女性たち」の昇進意欲を大きく削ぐ4つの要因
どんなに相性の悪い人でも必ず喜んでくれる「ほめ方」の3つのルール