「会社のための試み」が「自分のための活動」に
会社で社員研修を担当していた富永さん。「研修にプロボノを取り入れてはどうか」というアイデアが社内で上がったことから、試しに、支援を必要とする団体とプロボノ希望者をマッチングするNPO法人、サービスグラントによる、企業向けプログラムに参加した。「会社のために」と参加した活動だったが、経験してみると自分自身へのプラスも大きかった。そこで「もっと続けてみよう」と個人で参加することにしたという。
そして、昨年(2019年)5月から12月の約半年間、NPO法人コモンビートを支援するプロジェクトに参画した。
コモンビートは、表現活動を通じて個々の個性を引き出し、多様な価値観を認めあえる社会づくりを目指す団体だ。主軸事業は、年齢・職業・性別・国籍など、異なるバックグラウンドをもつキャスト100人を公募し、100日間で、異文化理解をテーマとしたミュージカルを作り上げるという「A COMMON BEATミュージカルプロジェクト」。富永さんは、人事総務部に所属して人材育成に関わっていたこともあり、ミュージカルを通じた人の変容をテーマとする同団体に関心を持ち、この団体の支援プロジェクトへの参画を希望した。
見ず知らずの6人が協力し、NPOの事業を評価
富永さんらプロボノチームに託されたのは、ミュージカルプロジェクトの事業評価だ。コモンビートでは、本来、手段であるはずのミュージカルにばかり注目が集まってしまい、目的である「個性が響きあう社会の実現」の発信力が弱いという悩みを抱えていた。また、ミュージカル参加者も、公演後に団体の支援を続ける人は一部の人に限られていたという。そこでプロボノチームには、人びとがミュージカルに参加することでどのように変化・成長しているか、社会的にどんな効果・成果をあげているかを「見える化」して事業評価を行い、報告書としてまとめることが求められた。コンサルティング会社がビジネスとして請け負うようなレベルの、歯ごたえのあるプロジェクトだ。
富永さんは、大手メーカーや情報産業など業界もバラバラ、デジタルマーケティングや営業支援など職種もバラバラの20~50代の人たちと、6人のチームでこのプロジェクトに取り組んだ。人の成長や変化、社会に与える影響をどう計るのか。明確な正解がないものを探ることになるため、議論し始めると話は尽きない。「チームとしての結論を期限内にまとめて、支援先に納得してもらえる形にするとのはとても難しかった」と富永さんは言う。