「Stay home」とは、まるで飼い犬へのしつけじゃないか

そうしたアイデアを「againstコロナ、withコロナ、afterコロナ」という時的カテゴリーおよび「仕事・生活・娯楽・教育・医療・その他」という分野カテゴリーに分けて募集し、これらを具体的な政策提言として整理分析し、関係する省庁や民間企業などとつなぐのである。数日で数百件のアイデアが集まったという。

倉持麟太郎『リベラルの敵はリベラルにあり』(ちくま新書)
倉持麟太郎『リベラルの敵はリベラルにあり』(ちくま新書)

今回のコロナはあまねく全国・全世代の人々に影響を与え、それぞれがフラストレーションや不便や不満を感じただろう。緊急事態宣言真っただ中の5月に、検察官の勤務延長を内閣が個別に認めることを可能にする法案の審議をめぐって、その「不要不急」さに対して有名芸能人を含んだ500万人を超える人々が「#検察庁法改正案に抗議します」とのハッシュタグをつけてツイートするという異例の拡がりを見せた。安保法制への反対ですら3~12万人規模のデモだったことや、普段政治的発信をしない芸能人も参加した点で、これまでに類を見ない現象だった。

私はこの現象を、法案の中身というよりも、人々の不公平感に火がついたことが原因だったと見ている。多くの国民が「不要不急」のスローガンのもと、犬が飼い主からしつけられるがごとく「Stay home」して自粛しているにもかかわらず、政府は不要不急の法案を自粛せずに強行するなどおかしいんじゃないか、という不公平感だ。

バスの中で携帯電話が鳴っているときの苛立ちとも似ている。具体的不利益が生じるわけではないが、「自分は守っているルールをなぜお前は守らないのか」という不公平感による怒りの表出である。あわせて、デモ参加のように強い態度表明が求められる発信とは違い、Twitterは身体性を伴わない簡易な発信手段であったことも、拡散理由の一つであろう。オンラインの強みが十二分に生かされた。

政策ベースなら「セレンディピティ」と化学反応が起こる

PMIの取り組みは、コロナをテコにコンテンツを収集するという発想と、その手段としてオンラインを利用するという点において、2020年コロナ禍での民主主義の勘所をおさえている。現在、PMI代表理事の石山アンジュ氏とともに、集められたアイデアから法制化による実効性が高いと思われるものを抽出し、民間法制局的機能でのコラボレーションを企図している。

「政策」ベースで人が集うと、自ずと「党派性」は溶解していく。しかも、多面的に専門家が携わって政策的に深い議論が行われるため、政局好きなプレーヤーは淘汰されていく。

こうした政策ベースでのコミュニティの再構築と専門性の発露は、あらゆるテーマでの集団形成の可能性を示す。アイデンティティを超えたテーマに集うので、そこには「差異」や「壁」は存在しない。そうすると、人々は、テーマ横断的に様々なコミュニティに参加することが可能となる。

テーマ横断的にコミュニティに参加する人たちは、新たな視点を提供してくれるだろう。ぞれぞれの専門家が、今まで自分がいた領域を出て新たなテーマや領域に触れることによって生まれる「セレンディピティ」(偶然的に今までとは違う何かに出会うこと)は、テーマと人のそれぞれに化学反応を起こす。テーマで人が領域を越えて交差し、人でテーマがブラッシュアップされる。

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