ミドル・シニア層の「ジャマおじ」がいない空間だからできること

こうした永田町の磁場を飛び越えて、当該テーマに対する様々な実務レベルでの専門家たちの意見を集約できるのは、インターネット社会ならではの利点である。そこでは当然、テーマ設定した主体が想定もしていない批判や反対論もあろうが、それこそが、当該テーマの解決策を逞しくするプロセスだ。非生産的な「ためにする」批判や、「シャンシャン」の賛成ばかりで構成される議論から独立した、実のある議論が期待できる。

また、高齢者がネット空間へのアクセスに消極ということも、好転的に作用するかもしれない。既得権益と規制を振り回すミドル・シニア層の「ジャマおじ」がいない空間での開かれた議論は、いまだかつてない新鮮な空気での議論となるのではないか。

台湾だけでなく、スペイン、アイルランド、エストニアなどの国々も、デジタル空間での熟議に関する先進的な取組みがしばしば紹介される。私も現在、シビック・テックを牽引しようとする同世代の人々と、新しい取り組みを模索している。日常的なサウナの問題から、香港デモをきっかけとした日本版香港人権法まで様々なコンテンツを題材に、Zoomシンポジウムやクラウドローなど、新しいプラットフォームでの議論の可能性を模索中だ。

「官僚・政治家」と「スタートアップ経営者」がつながる

新たな試みとして、一般社団法人PMI(Public Meets Innovation)の取り組みが参考になる。彼らは、パブリックセクター(官僚・政治家・弁護士・政策関係者等)とイノベーター(スタートアップやベンチャー経営者、テクノロジー技術者等)がつながる新しいコミュニティを提供している。

いわゆるミレニアル世代を中心に、社会が抱える様々な分野での課題に対して、イノベーションの可能性と社会実装を議論する場の構築を試みているのだ。彼らのアウトプットとしての目標は、ITやテクノロジーなど新技術やアイデアを用いて、こうした社会問題の解決のために官民プレイヤーがなすべきことの提言である。

そんなPMIが、今回「コロナを危機で終わらせない」プロジェクトとして、「新型コロナ危機をアップデート機会に変えるアイデア・提言」を募集した。コロナをきっかけに、多くの人々が「日々の生活でこうした方がいいんじゃないか」という様々な点に気づいたはずだ。コロナが政治を日常化したのだ。