対等のパートナーである理知的医師

ベイジル・ラスボーンがシャーロック・ホームズを演じた映画では、ナイジェル・ブルースが“間抜けな引き立て役”としてワトスンを演じたため、長らくワトスン自体にもそのイメージが持たれていた。

北原尚彦『初歩からのシャーロック・ホームズ』(中公新書ラクレ)
北原尚彦『初歩からのシャーロック・ホームズ』(中公新書ラクレ)

それを払拭し、正典本来の「対等のパートナーである、理知的な医師」としてのワトスンのイメージに戻したのは、グラナダ版ドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』におけるワトスン俳優デヴィッド・バーク(及び後半のエドワード・ハードウィック)の功績が大きい。

ホームズ以前の創作上の探偵、ポーの生んだオーギュスト・デュパンにも相棒はいた。しかしホームズとワトスンのコンビの印象があまりにも強すぎるため、探偵の相棒のことは「ワトスン役」と呼ばれるようになっている。

やはり、シャーロック・ホームズが未だに人気があるのは、ワトスンというパートナーがいてこそなのである。

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