探偵小説「シャーロック・ホームズ」は、なぜ人気が衰えないのか。ホームズ研究家の北原尚彦氏は「ワトスン博士という“最強の相棒”がいるからではないか」と指摘する――。

※本稿は、北原尚彦『初歩からのシャーロック・ホームズ』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

ベイカー街
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ホームズの「相棒」にして真の友

シャーロック・ホームズのシリーズにおいて、ホームズの次に重要な人物――いや、同等に重要な人物と言っていいだろう――、それはジョン・H・ワトスン博士だ。

ベイカー街221Bの部屋にホームズと共に住んでいて、ホームズの探偵業の相棒であり、記録係でもある。ホームズ正典は(ごくわずかな例外を除いて)ワトスン博士が書いた形になっている。

1878年にロンドン大学で医学博士号を取得後、ネトリー陸軍病院で軍医としての研修を受けた。その後、第五ノーサンバーランド・フュージリア連隊に配属され、インドへ向かう。到着時点で第二次アフガン戦争が勃発していたため、隊を追ってこの戦争に従軍。マイワンドの戦いで負傷して病院に収容された後、腸チフスにかかって衰弱し、英国に送り返された。

ロンドンで財政的に先行きが怪しくなった頃、旧知のスタンフォードとばったり出会い、下宿の家賃を分担できる同居人を探しているという人物の話を聞かされる。渡りに船とばかりに飛びついたところ、それがシャーロック・ホームズだったのである。