ミドルネームは「ヘイミシュ?」

また正典では、ミドルネームの「H」が何の略であるかは記されていない。しかしシャーロッキアンの間では「H」=「ヘイミシュ」である、つまりフルネームは「ジョン・ヘイミシュ・ワトスン」である、というのが定説となっている。

ホームズのシルエットが描かれた、ロンドン地下鉄ベイカーストリート駅のホーム
写真=iStock.com/mikkoseppinen
ホームズのシルエットが描かれた、ロンドン地下鉄ベイカーストリート駅のホーム

ワトスンのファーストネームは「ジョン」なのに、妻が一度だけ「ジェイムズ」と呼んでいるシーンがある。これも正典の謎のひとつなのだが、スコットランド語で「ヘイミシュ」がジェイムズと同義であるため、ミドルネームの「H」が実は「ヘイミシュ」であり、それゆえ妻は家庭内で愛称として「ジェイムズ」と呼んでいた――と結論付けられたのだ。この説を唱えたのは、ミステリ作家でありシャーロッキアンでもある、ドロシイ・L・セイヤーズである。

ホームズの引退後は別々に暮らしていたが、週末にはたまにサセックスの隠居地へホームズを訪ねていた、と『ライオンのたてがみ』で語られている。しかし同事件はワトスンのいないときに発生したため、ホームズ自身が筆を執っている。そしてホームズが『最後の挨拶』の事件で久々に現役復帰した際には、ワトスンも協力要請を受け、久方ぶりの再会を果たした。

何年も死んだと思っていたホームズが突然生きて目の前に現れた際には失神したりしているため、「ワトスンは女だった」という説を唱えるシャーロッキアンもいる。