資産効果で株価上昇が景気を下支えする

株や不動産等の資産価格の高騰は、「資産効果」といって景気を押し上げる効果がある。株や不動産を持っている人たちが、お金持ちになったつもりになり、消費を増やす。

1985年から1990年にかけて日本で起きたバブルがその典型的例で、日産の当時の最高級車「シーマ」がバカ売れし「シーマ現象」という言葉が生み出された。

シーマが売れれば、それを見た投資家が日産株をさらに買い進み、上昇した株価のおかげで、株保有者が、もっと金持ちになったつもりになり、さらにお金を使う。このような好回転が働いたのだ。日産社員のボーナスも上がる。

おかげで当時の消費者物価は、今の日銀の目標である2%よりはるかに低い0.3~0.5%で推移したにもかかわらず、経済は狂乱した。

きちんとそろった1万円札
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

その経験から考えると、今の世界的な株価上昇は、「現状の経済実態」にはそぐわなくても、資産効果によって起こる「将来の好景気」を反映した動きともいえる。

米国株価の上昇がしばらく継続すると思う

米国では401Kという確定拠出型個人年金の存在もあり、日本よりはるかに多くの国民が株式を所有している。そして、今、米株価は「史上最高値」を更新中だ。

「史上最高値」ということは、儲かっている人も損している人もいるという状態ではない。個別株でみればいざ知らず、一般的に言えば、株を保有している人ほぼ全員が、儲かっているということだ。この資産効果は大きい。

株価上昇中でも、とくに「史上最高値」レベルでの資産効果は抜群で、景気に強烈な好影響を与える。

また米国はこれからの時代の二大資源である情報産業とエネルギー産業を握っている。GAFAはすべて米国企業だし、世界一の産油国家なのだ。さらにはコロナワクチン製造も一歩、他国に抜きんでているようだ。

こう考えると、現在の米株はまだ上昇していく可能性が大きいと私は思う。日本のバブルは1985年から1990年だが、今の米国株市場は、日本の1988年とか89年というのが私の頭の中でのイメージだ。

日本株の上昇は米国株ほど力強いとは思わない

日本株も上昇してはいる。マスコミは、強いマーケットを印象づけたいのか「29年ぶりの高値」という言葉で株価上昇をはやし立てている。

気持ちはわからなくもないが、冷静な分析が必要だ。29年ぶりの高値とは、29年かかって、やっと29年前のレベルに戻ったということ。現在の25350円(11月11日)は1989年12月の史上最高値38915円の65%でしかないのだ。

NYダウは29年前(1991年末)、3168ドルだから、現在の2万9397ドル(11月11日)は当時の9.3倍。それに比べて日本株は見劣りが著しい。

ただ、名目GDP(国内総生産)の低い伸びを見てみると、日本株の「何とも情けないパフォーマンス」は納得がいく。現在の名目GDP(国内総生産)は、マスコミが「株価が29年ぶりの高値」とはやし立てる29年前(1991年末)の482兆8000億円から約10%しか拡大していない。ちなみに、この29年間で米国の名目GDPは2.0倍だ。