与党議員の一部が「国民1人あたり5万円の定額給付金の追加支給」を菅義偉首相に要望し、話題を集めている。さらなるバラマキは必要なのか。たくみ総合研究所代表の鈴木卓実氏は「放漫財政の議論に対し、麻生太郎財務相は『日本を外国の経済理論の実験場にしたくない』と述べている。麻生氏が言うように、バラマキは効果が薄く、やるべきではない」という――。

放漫財政派の論調を一蹴した麻生財務相

「勘違いしている人多い」。新型コロナウイルス対策の定額給付金の追加支給について、麻生太郎財務相は10月16日の閣議後の会見で放漫財政派の論調を一蹴した。

閣議後記者会見で東証への立ち入り検査を説明する麻生太郎金融相=2020年10月23日、東京・霞が関の財務省
閣議後記者会見で東証への立ち入り検査を説明する麻生太郎金融相=2020年10月23日、東京・霞が関の財務省(写真=時事通信フォト)

14日に、長島昭久衆院議員ら「経世済民政策研究会」の有志が菅義偉首相に要望書を提出。予備費を用いた国民1人あたり5万円の定額給付金の追加支給や、第三次補正による定額給付金の支給継続を喧伝していたことを受けての麻生財務相の発言である。

発言の背景を探ろう。緊急事態宣言の下、「連帯して国難を乗り越えていく」という大義名分があった10万円の定額給付金とは違い、現在の状況は論拠に乏しいという政治判断がある。また、第三次補正予算で巨額の財政支出をするために、まずは5万円の定額給付金の追加支給で予備費を使い切ろうという発想も、議論が紛糾するだろう。

経済効果について考えると、定額給付金による消費の底上げは小さいという事情もありそうだ。

内閣府が2010年に公表した「定額給付金は家計消費にどのような影響を及ぼしたか」では、定額給付金による消費増加額は受給額の25%。他の研究でも消費増加額は受給額の10~30%に留まる。三密回避やソーシャルディスタンスといった制限がない通常の経済活動が行える状況でも、給付金のほとんどは貯蓄に回るという経験則がある。