海外投資家の視線は厳しさを増している
物価連動債では、Go Toトラベルキャンペーンの影響から足元のインフレ率が下がっていることに加え、今後の携帯電話料金の引き下げ期待などの要因で需給環境に改善の兆しが見えないという指摘がある。このため、物価連動債の手厚い買い入れ消却を要望する意見もあり、緊張感のある展開が続いている。
国の予算・支出を管理するだけでなく、国債発行による資金調達を円滑に行い続けるためにも、財政の信認が問われる局面でもある。
今年6月にS&Pによる日本国債の格付け見通しがA+ポジティブからA+安定的に引き下げられたことに代表されるように、投資家、特に海外投資家の日本国債に対する目線は厳しさを増している。
国債格付けの影響は無視できない。日本国債の格付け低下に連動して、日本の金融機関の格付けも低下する。その結果、外貨調達でプレミアムを課されたり、デリバティブ取引で取引相手として不適格とみなされたり、リスクウエートが高い貸出先に分類されたりと、さまざまなデメリットが生じる。
日銀が国債を買い支え続け、政府の資金繰りが支えられたとしても、金融機関の経営や金融システムへの影響は計り知れない。東京や大阪、福岡が国際金融都市を目指すなど夢のまた夢ということになる。
プライマリーディーラーの半数は外資系金融機関なので格付けにシビアだ。そして、日本銀行の資金循環統計を基に海外の日本国債保有割合を計算すると、今や、海外の保有割合は14%になる。
「自国通貨建て債務はデフォルトしない」は本当か
自国通貨建て債務はデフォルトしないという話がまことしやかに言われることが増えたが、カナダ銀行のリポート「Database of Sovereign Defaults, 2017」によると、ロシアやブラジル、ベトナムなど多数の国が自国通貨建て債務でデフォルトを起こしている。デフォルトした国の中には、政府が強権で資金調達できるだろう北朝鮮も含まれている。
自国通貨建てか外国通貨建てかは、決定的なポイントではなく、一言で言えば、デフォルトするかどうかは、政府が債務を踏み倒した方が得かどうかにかかっている。そして、国債の海外保有割合が高くなるほど、国際収支への影響などから踏み倒すインセンティブが高まる。
こうした事情はマーケット関係者や経済学者には知られていたが、今年発表された世界銀行の「Debt Intolerance(許容できない債務)」というリポートで定量的な分析が提示された。同リポートでは、海外の民間投資家による国債保有割合が20%を超えると金利が上昇するリスクが指数関数的に高まると指摘している。また、政府債務の対GDP比が60%を超えることもポイントになる。