地方局でニュース番組や情報番組の経験が豊富な女性アナは、表情を使ってリポートを補うという。
「私の場合、キラキラした目をしながら、え? っと小さく疑問の声を出し(あくまで笑顔!)、これは……と考え込むような顔して(ここは、視聴者の皆さま、本音を読んでねという小さな良心)、『これまで経験したことがないお味です!』ととびっきりの笑顔で締めるという感じでしょうか。正解かどうかはわかりませんが、スポンサーに気を遣いつつの小さな抵抗を繰り返す、リポーターの窮策でございます」
同じく地方局でニュースや情報番組の経験が多い女性アナウンサーも「まずかったらその料理自体を避けたいところですが、やはりどんなお料理も自分の価値観だけでいいと決めてしまうのは失礼だと思うので、『いままでには食べたことなかった』と言ったり、味の中の突出する味をお伝えしたりします!」と打ち明ける。
やはり「初めて」を強調するのは有効なテクニックのようだ。
「1を100にするのはありですよね」
そして、3大派閥の最後が「個性的・プロの仕事」派だ。これはある意味「自分は素人なので味が分かりません」と自虐に逃げる高等技術だ。
東京キー局で、ニュース・情報番組からバラエティまで幅広くこなす女性アナウンサーは、詳しく説明する。
「判断つかない時、あまりおいしくないというときには『個性的ですね』『玄人にわかる味!』『ツウ好みですねー』とか、そんな言い方をしたりします。わたしはあくまで素人です、というへりくだった感じで……」
「コメントするにはあまりにも普通なときは『素朴なおいしさ』『ホッとする味』『家で食べるような安心する味』と言ったりしますね。マズいときは『刺激的なうま味』とか『経験のない味』とか『かつて味わったことがない領域』とか、嘘ではないから(笑)、そう言ったりします。ゼロは100にならないけど、1を100にするのはありですよね。食レポって」
この他にも、東京キー局のベテラン男性アナウンサーは「うーん微妙ですねえ。人によって味の表現が分かれるところです。わかる方にはわかるプロの仕業です」。
東京キー局のニュース読みに定評ある女性アナウンサー「個性的ですねー。あっ、○○の香りが! と嘘ではないが、論点をずらす」などなど、この「個性的・プロの仕事」派の支持者は、ベテランでテクニックのあるアナウンサーにも多いようだ。
便利すぎる「○○なのに、どこか××」構文
さらには、こんな「応用編」の変則ワザを使うアナウンサーもいる。
東京キー局OGの女性アナウンサーは、笑わせるという。「個性的な味わい・ユニークな味わいとか、身体に良さそうなんて感想を言って、材料を当ててみるとか、何か全く別のものにたとえて笑いを取りにいくとかですかね。そんな状況になったら、研修の課題の一つと思って、トライしてみるかな」