味の評価を言わず、特徴を表現する

11人の回答を見てみると、主に3つの「派閥」があることが分かった。最も多かったのが、おいしい・まずいの評価を言わずに味の特徴を表現する派だ。スポーツのリポートが得意な、女性フリーアナウンサーの答えが最も模範的だと思うので、最初に紹介したい。

「例えば……苦いなら『少しの苦味が利いていて、全体の味を引き締めてくれますね』。辛いなら『スパイスがよく効いている本場の味ですね。辛みの強さが鮮度の良さを感じさせます』。味が薄すぎるなら『上品な味わいで出汁のうま味が効いていますね。素材そのものの味を活かしたヘルシーな味わいです』。味が濃すぎるなら『ご飯が進みそう。パンチの効いた味わいが食欲をそそります』などなど、ツライ中でもその味の特徴に注目して、それを言葉にして、まずいとはもちろん、おいしいとも言わなくてよいのです」

女性カメラマンがテレビカメラを構える
写真=iStock.com/waltkowalski
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東京キー局でニュース番組のMCを務める、現役男性アナの答えも分かりやすい。

「僕は食レポのとき、おいしいと思わなければ絶対に『おいしい』とは言いませんでした。どうしていたかと言うと、文字通り『食レポ』をしていました。熱いのか冷たいのか、硬いのか柔らかいのか、甘いのか辛いのか。料理を口に入れた時に感じることを一つひとつ丁寧に伝えることでその料理の特徴を表現していきました。おいしいとかまずいとかはそもそも言う必要はないんです。それよりも、食べた時にどんな感じなのかを視聴者が食べなくても感じられるようなコメントを心がけていました。料理を作った人も的確なコメントを聞いて嫌な思いをすることはありませんからね。丁寧に伝えることである意味で誤魔化せてしまうということでしょうか」

「これは私、初めて出会った味です‼」で逃げる

次いで多かったのが「私は初めて食べた」派だ。味の評価をしているようで、実は巧妙に論点をずらし、「自分が経験したことがない」と自分語りのフィールドに持ち込む巧みな技である。

スポーツ実況が得意な男性フリーアナウンサーの答えは、こうだ。

「僕の場合は『これは私、初めて出会った味です‼』で逃げますね。しょっぱいとか苦いとか、感じたまずい理由を特徴として言おうとしたら、そこがお店の売りだった時に取り返しのつかない展開になりそうなので(笑) できるだけ主語を『自分』に持っていって、自分はどう感じたかに逃げるかと思います。ちなみに昔、ケーブルテレビで食レポをやっていた時、超頑固おやじのお店に行ったら、すごく普通の味で(笑) とりあえずおやじさんを見て、黙ってニコッとうなずいたら、向こうも笑顔でうなずいてくれて(笑) 事なきをえたことがあります」