疑問③「ジョブ型雇用」になると個人の働き方はどう変わる?

ジョブ型雇用の採用でまず変わるのは、「仕事の範囲の明確化」だ。メンバーシップ型を採用する多くの企業では、従業員1人ひとりの仕事が実は細かく定められておらず、上長に任せられているのが実情だ。ジョブ型では「ジョブディスクリプション」と呼ばれる職務記述書が職務ごとに用意されており、職務内容が明確化されている(ただし、ジョブ型を取り入れたばかりの企業では、あいまいな記述書が多いという問題点もある)。

島津翔『さよならオフィス』(日経プレミアシリーズ)
島津翔『さよならオフィス』(日経プレミアシリーズ)

従業員は与えられた職務の中で、ある程度の権限を委譲され自律的に働く。より自由度の高い働き方になるだろう。

一方で、プロフェッショナルのレベルを評価するジョブ型は、逆に言えばレベルが上がらなければ評価や給与が上がらないということになる。評価の透明性が高まることで働く人にとってはフェアだがシビアな制度とも言えるだろう。

評価や給与を上げるためには、学び続けることで自分のスキルを研さんする必要がある。「欧米では一般的だが、職務外で自分に投資し、専門性を身に付ける動きがポピュラーになると考えられる。少なくとも20代のうちに自分の専門性を確立する必要があるだろう」(大久保氏)

管理職も「マネジメントのプロ」へ

メンバーシップ型では管理職の下に専門職が配置されることが多かったが、ジョブ型では管理職も「マネジメントのプロフェッショナル」と定義される。これまでの日本型雇用のように、現場のプレーヤーで優秀だった従業員が出世コースとして管理職に就くのではなく、組織運営のプロとして自分の専門性を高めていく必要がある。ゼネラリストとしての総合力は評価されないからだ。

マネジメントのプロフェッショナルにキャリアチェンジするのか、それとも、営業なら営業、マーケティングならマーケティングといった自分が培ってきた専門領域をプレーヤーとして極めていくのか。これまでは会社に一任されていたこの選択肢を、働く個人が持つことになる。

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