場所にとらわれない働き方が広まりつつある。今年5月まで中目黒のマンションに住んでいた小林未歩さんは、コロナ禍を機に全国を転々としながら働くことを選択した。日経クロステック副編集長の島津翔さんが取材した――。

※本稿は、島津翔『さよならオフィス』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

コンピュータで作業している女性
写真=iStock.com/DragonImages
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「私、何でここに住んでいるんだろう」

企業が働き方の模索を続ける中、個人は一足先にニューノーマルに移っている。

取材した事例は「突飛とっぴな働き方」に映るかもしれない。

ただ、場所から解放された私たちは、これまでの前提にとらわれずに働けるはずだ。

一方で、自宅とオフィスに次ぐ「第3の拠点」が不足する事実も見えてきた。

「私、何でここに住んでいるんだろう」

小林未歩さんがこう思い始めたのは、緊急事態宣言が発令されて数週間たった2020年5月のことだった。小林さんは、ホテル・旅館のコンサルティングや運営を手掛ける温故知新(東京都新宿区)で、ホテル関連の企画を担当する。当時、東京・中目黒のマンションに住んでいた。間取りは1Kで、人気エリアの駅近物件。家賃は10万円を超えていたが、オフィスにも近いことや友人との食事、買い物などに便利だったことが、そのマンションに住んでいた理由だった。

新型コロナで、その理由の大半が消えてなくなった。

緊急事態宣言に伴う外出自粛によって、仕事は完全在宅勤務になった。友人と食事する機会はなくなった。電車にも乗らないので駅近のメリットもほとんどない。「家とスーパーマーケットを往復している日々だった」。小林さんはこう振り返る。