突然電話がくれば、大半の人は「不十分だ」と回答する

まず「十分ではない」が過半数を占めた件。この問題のように、やや入り組んだ案件の場合、国民の大部分は問題の詳細まで理解しているわけではない。ましてや、世論調査は、ある日突然電話がかかってくるのだから、考えの整理がついていないことも多い。

そういった人たちは、調査の質問に対し「説明不足」と答える傾向がある。特定秘密保護法案の扱い、安保法制、憲法問題、「桜を見る会」……。だいたいどのテーマについても、政府の対応を問うと「不十分だ」が多数を決める。分かりやすく言えば「聞かなくても分かる設問」「ためにする設問」ということになる。

今回、学術会議の問題で聞けば、「不十分」が過半数になるのは明白だった。それをもって「学術会議の問題で国民は怒っている」と断じるのは少しあおりすぎではないか。

60%前後で推移する今の支持率は、客観的にみれば決して低いとはいえない。確かに前月と比べて10ポイント近く下がったのは政権にとって好ましい話ではない。しかし1回目の調査は日本国民の「新しい物好き」気質に伴うご祝儀相場として高く出ることはこれまでの調査で証明されている。

今の菅内閣の支持を下支えしているのは「コロナ対応」である

1回目と2回目の間に10ポイントぐらいの落差があるのは、想定の範囲内だし、それで60%程度を維持しているのは「非常に高い」といえる。実際、2000年以降の政権で、2カ月目に支持が目に見えて下落しなかったのは小泉純一郎氏ぐらいだ。

永田町では「内閣支持率は支持率が4割を切れば危険水域」と言われる。それより20ポイントあまり高い現状は、余裕で「安全圏」だ。

今の菅内閣の支持を下支えしているのは何か。ずばり「コロナ対応」といえるだろう。意外に思えるかもしれないが、国民は菅政権のコロナ対策を高く評価している。

例えば読売新聞の調査では、政府の新型コロナ対応を「評価する」と答えた人は56%。8月、つまり安倍内閣末期の同様の調査では27%だったから、ほぼ倍増したことになる。

大災害などの有事が起きた時、国民の政権への評価は低くなることが多い。国民が厳しい生活環境に置かれるのだから当然といえば当然だ。阪神大震災の時の村山政権、東日本大震災の時の菅政権に対する評価は、その典型だった。今回の新型コロナ対応でも、安倍政権への評価は厳しいものが多かった。だから、今の菅政権への評価は非常に珍しい。