⑥会社ぐるみ型

会社の方針として、社長や管理職が特定の社員に対してハラスメントをする場合がある。多くの場合は退職させる目的でなされる。

退職の強要だけではない。会社全体が業績至上主義で長時間労働をさせるのは当たり前という場合も会社ぐるみといえるだろう。このような会社はブラック企業である。

以上、6つの傾向タイプをご説明した。具体的な上司の顔が浮かぶ読者もいることだろう。

パワハラ経営者、管理職にならないための5つの心得

最後に、パワハラ経営者、管理職にならないための5つの心得としてまとめておこう。

1 自分がパワハラ傾向タイプに当たるときは部下への言動に注意すること
2 グレーになることをこわがらず必要なフォローを怠らないこと
3 叱るときには叱り方5原則(本書で詳述)を守ること
4 部下が喜んで仕事をするように指示指導の説明をすること
5 部下との良好な人間関係とコミュニケーションを作る努力をすること

「あたりまえだろ」と思われるだろうか。しかしその「あたりまえ」ができていない人が多いことが問題なのだ。

この5つの心得に付け加えたいことがある。

井口博『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)
井口博『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)

経営者や管理職の方には、ハラスメントを普段は「広め」に捉えておく思考法をお勧めしたい。「この程度ならばパワハラにはあたらない」「法的な要件を満たしていないからパワハラではない」「取引先からなのでパワハラではない」といった捉え方は「狭く」捉える思考法である。

こうした思考法は予防の観点では有益とは言い難い。予防あるいは危機管理の観点では、「広め」の捉えたうえで対策を講じておくことが望ましい。会社の方針や、自身の言動を考える上でも「広め」の思考法をインプットしておくほうがリスクは下げられる。

一方で、現実にパワハラが問題化した場合には、法的な要件、パワハラをより「狭く」捉えた定義を武器として戦うこともありえると思う。「これはパワハラだ。慰謝料を払え」といった主張に対して、「法的に見た場合に、そうとは言えないのでは」という理論武装が必要になることがある。もちろんそういう事態にならないのが一番いいのだが。

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