会社内でのどんな行為が「パワハラ」になるのか。『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)を出した弁護士の井口博氏は「パワハラには『意図的パワハラ』と『無意識パワハラ』があるが、その違いを理解していない人が多い」という——。
※本稿は、井口博『パワハラ問題 アウトの基準から対策まで』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
1000件以上の相談で見えた「パワハラ上司」
私はこれまで弁護士として1000件以上、ハラスメント相談を受けてきた。企業などを対象にパワハラ予防の研修講師を行うこともある。
その経験からいえることは、パワハラには「意図的パワハラ」と「無意識パワハラ」があることだ。
もちろん意図的な場合のほうが悪質性は高い。ただ「意図があったかかどうか」の見極めは難しい。判決例では、出勤しても何も仕事を与えられず机の前に座らされているだけという仕事外しのケースがある(東京高裁1993年〈平成5年〉11月12日判決)。
このような外形上から意図的パワハラであることがはっきりしている場合は白黒の判断は難しくない。しかし実際の例としては意図的かどうかが明らかでないことが多い。というよりもそれはわからないようにすることが多い。
管理職は要注意「厄介な無自覚パワハラ」
無意識パワハラのほうは、悪質性は低いとはいえ、自覚がない分厄介だという面はある。パワハラ傾向のない誰もが気付かないうちに加害者になってしまうことがあるからだ。その意味で、管理職の方々にとって用心すべきはこちらのほうかもしれない。
たとえば、次のようなケースだ。