精神論を振りかざす「昭和型上司」とうまく付き合うにはどうすればいいのか。菅義偉首相は、「高度経済成長期を経験したわれわれ世代は、つい日本のこれからを担う若い世代に厳しくしてしまう。飲み会や食事会に誘って自分のビジョンを話せば、『日本の未来を託しても何の心配もない』と安心してくれるのではないか」という――。

※本稿は、別冊プレジデントムック『第99代総理大臣 菅義偉の人生相談』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

臨時国会召集に当たり記者団の取材に応じる菅義偉首相=2020年10月26日、首相官邸
写真=時事通信フォト
臨時国会召集に当たり記者団の取材に応じる菅義偉首相=2020年10月26日、首相官邸

高度経済成長期の経験があるからこそ、若い世代へ厳しくしてしまう

菅義偉です。今回のお悩みはこちらです。

60代後半の上司がいかにも“昭和の考え方”でついていけません。精神論を振りかざし、「やるしかないだろう」が口癖です。あまりの激務で部下が一人体調を崩してしまったのですが、人員の補充がないまま半年がたち、残ったメンバーの心身も限界です。
さりげなく会社の机に『失敗の本質』を置いて反省を促そうとしましたが、鈍感力の強い上司には無意味でした。「せめて人員の補充を」と頼んでも「やる気がないからそんなことを言うんだ」と取り合ってもらえません。(30代男性・会社員・神奈川県)

その上司の方と同じ世代に属する一人として、他人事とは思えない心境であなたの相談を読みました。「働き方改革」は政府が積極的に推進する重要課題の一つであり、不要な残業や不合理な勤務環境の改善・改革は極めて重要です。また、仮に上司の方の言動がパワーハラスメントのレベルであれば、弁解の余地はありません。

問題が上司のマネジメント能力や資質の不足に起因するもので、その後も改善されないのであれば事態は深刻です。会社の相談窓口や会社の所在地を所管する労働局や労働基準監督署の労働相談コーナーに持ち掛けてみてください。

ただ、そのうえで誤解を恐れずに言えば、私も上司の方の同世代であるだけに、彼の心持ちが少しわかるような気もしてしまうのです。昭和前期に生まれ、高度経済成長期を知る私たちの世代には、特有の「頑張りすぎる」気質があり、それが時に若い世代への過度の厳しさとして表れてしまうこともあるのです。