三位一体の改革以降、道州制の議論は停滞している
また、道州制も近年議論が低調である。道州制に関係する論議の始まりは古く、第二次世界大戦前にも全国を6つの州に分けて官選の長を置くとした「州庁設置案」(1927年:行政制度審議会)などがあるので、決して最近の思いつきではない。
第二次世界大戦後も政府や地方制度調査会などが様々な答申を出したほか、経済団体などからも都道府県制度の再編を前提とした提案や意見があったが、現行都道府県制度の枠組みが見直されることはなかった。
平成に入ってからも、道州制の議論は続き、第28次地方制度調査会は2006年2月28日に「広域自治体改革のあり方の具体策としては、道州制の導入が適当と考えられる」といった答申を出した。2007年1月には、内閣に新たに設けられた道州制担当大臣のもとに、有識者会議として「道州制ビジョン懇談会」が設置され、2008年3月には中間報告が公表された。
このようにみると道州制の議論は不足しているというよりは、真剣に議論を進めるきっかけが不足している状況といえそうだ。地方自治体においても、小泉改革時代の三位一体の改革で地方にある程度権限と財源が移管されて以降、道州制に関心を失ってしまっている。
こうしたなか、前述したとおり、大阪都構想はこれまでパンドラの箱であった政令市と都道府県の関係、都道府県同士の合併、最終的には道州制の議論を進めさせるきっかけとなるのは間違いないだろう。
タワマン増加で賛成票が増えているという分析も
現時点では、大阪都構想の帰趨はまだわからない。私が聞いたところでは、大阪市内にタワーマンションが増えた結果、これまでのしがらみにとらわれない有権者が増えており、大阪都構想への賛成票が増えているとの分析も聞かれる。
2020年6月には、自民党の府議団が、広域行政の一元化や大阪市の権限や財源、人材が大阪府に移ることで、府域全体の最適化が期待できるなどの賛成意見が団内で多数を占めたことから、賛成の立場を取るなど、地殻変動が感じられる。
一方で、これまでの大阪市への愛着が強い人々や、大阪都構想という実験的な取り組みを不安視する人々の間では否定的な意見も多いとのことだ。賛成・反対双方が建設的に議論して、令和の時代に相応しい地方自治の形を示してほしい。