提案を受けた総務省の官僚は提案内容を電波監理審議会に審査させ、その答申に基づき提案に優先順位をつけて電波の配給先を決めていく。審議会の答申は尊重するが、最終的な判断は総務省の官僚が行うという裁量権限を持たせた方式で、最終的に決まるまでのプロセスが不透明になる。
これに対し、割り当ての対象となる電波帯域を競売にかける「オークション方式」では、入札価格が最も高い業者が落札し、電波が割り当てられる。オークションにかける電波帯域は通常いくつかのスロットに分割されるので特定の事業者に偏って落札されることはない。入札プロセスが透明で、恣意的な操作が入る余地もない。
「比較審査方式」との最大の違いは、比較審査方式で電波割り当て先に決まった業者には無料で電波が割り当てられるのに対し、オークション方式で落札した業者からは、入札する周波数帯の人気にもよるが、数千億円~数兆円もの収入が国庫にもたらされることだ。
言い換えると、比較審査方式は、電波官僚が携帯会社に補助金をバラまいているのと同じだ。しかも、バラマキ先は日本企業の中でも指折りの超高収益企業なのだ。
「持ちつ持たれつ」業界秩序を優先する行政
総務省に対応するためNTTには持株会社やドコモなどに総務省担当が置かれている。私がNTTに勤務していた頃は、通信行政は実質的にNTTが起案し総務省が承認して決まる、と言われていた。
規制のあり方次第で数十~数百億円の収入が簡単に動くため、NTTは優秀な人間を総務省担当にはりつけ、ビジネスよりも規制を有利にしてもらうためのロビー活動に力を入れてきたわけだ。
総務省から見ても、ドコモは特別な存在だ。総務省には、長年にわたってNTTの固定電話を規制してきた歴史があり、携帯免許を主として既存通信企業の子会社に与えてきた。
その結果、携帯子会社との間でも親会社の固定電話会社と同様の「持ちつ持たれつ」関係が持ち込まれ、ドコモなどとの間で業界秩序を優先する電波行政が行われてきた。
官僚が電波の経済的価値を勘案して優劣をつけ、事業者に割り当てる方式は裁量権限が大きく、政治的な介入も受けやすい。その裁量にすがりつくドコモや、その言い分を聞くことで天下り先を確保したい総務省の思いが重なり、阿吽の呼吸で大量の天下りが行われる。