ほかにも、こういうことは言ってはならない。

・「あまり大ごとにするのは職場の雰囲気をこわしますよ」
・「もっと早く相談に来れば何とかなったのに」
・「相手に悪気はないんだから気にしない方がいいですよ」
・「それなら相手に倍返ししてやればどうですか」

最後の言葉はドラマではスカッとするが、実際にこのようにアドバイスするのは適当ではない。

「指導・注意」が「パワハラ」にならないために心がけること

管理職は、パワハラで訴えられるのはこわいものの、指導や注意はせざるを得ない。また、部下がどうしようもないミスをしたら、つい感情的になることもあるだろう。人間だからそういうことはある。

しかし、こういう際もリカバーを心がけて話をすることが大切だ。

たとえば、ミスをした部下を叱責したら、根拠のない言い訳をした。

そんなときに「バカヤロウ! 自分がミスをしておいて、よくそんなくだらない言い訳が言えたもんだ!」と大声で怒鳴ってしまった。

大声で怒鳴ること自体、パワハラとされる可能性はある。こういう時に、言い過ぎたと気づいたら、すぐに謝るのがよい。

「済まなかった、ついカッとなって怒鳴ってしまった」という調子で素直に謝ったうえで、「もう怒鳴ったりしないから、ミスの原因を一緒に考えてもよいか」という風に冷静に話しかけるのもよいだろう。

身に覚えのない部下からの訴えにどう対処すべきか

管理職にとって、普段の言動がパワハラとされることに加えてこわいのは、身に覚えのない訴えをされた場合だろう。

たとえば、以下のようなケースだ。

――A課長は、部下のBとの人事面談で、「ふだんの仕事振りに緊張感が足りないのでよい評価は付けられない」と言った。Bは「そんなことないですよ。一生懸命やってるのに」と不満気だった。
数日後、Aは人事部から呼ばれた。Bからパワハラ相談があったというのだ。その内容は、会議室でのBとの人事面談のとき、人事評価で口論になりAが怒ってBを押したためBが椅子から転げ落ちたというのである。Aは全く身に覚えがなかった――。

これに近いケースが実際にあった。Bがこのように主張している以上は、人事部はAとBから詳しいヒアリングが行われるだろう。もちろんAは事実無根であると強く主張すべきである。

ヒアリングでは、他の社員にも、口論を聞いたかどうか、椅子から転げる音を聞いているかなどが聞かれるだろう。AとBのその前後の勤務状況も聞かれる。