4割値引き実現すれば通信費は4.3兆円減=消費税2%に匹敵する規模

「三度目の正直」の今回も似たような主張の対立が繰り返されている。

コロナ不況への対策として野党は消費税減税や一時停止を主張し、政権は消費税については現状維持とし、むしろ携帯代の引き下げを打ち出している。

消費税は1%幅の引き下げで2兆5000億円の税負担減となると考えられているので家計の通信費支出10兆7000億円の丸ごと4割、4兆3000億円の引き下げは、消費税2%近くに匹敵する規模なのである。

政権中枢からではなく通信分野の監督官庁である総務省から携帯電話代の引き下げが提起されてもおかしくはないだろう。そうなっていないのは、なぜか。携帯電話会社への天下りなどによって、監督する者が監督される者と通じてしまうことがあるため、と考えるのはうがちすぎだろうか。

携帯大手3社がいまだにテレビに広告費をじゃぶじゃぶつぎ込むワケ

さらに国民がもっと不思議に感じてよいのは、メディアの指摘の手ぬるさだ。

他の社会問題、例えば保育所が足りないというような問題がしきりと報道されるのに対して、これだけ家計の重い負担になっている通信費について、大手の新聞やテレビ各社はほとんど独自取材・調査を行わず、政府が言い出すまで全くといってよいほど問題点を指摘してこなかった。

文部科学省や厚生労働省などが発表するスマホ依存に関する子どもなどへの健康上の弊害についても、私の印象としては、各メディアは同業他社より出すぎた報道にならないように抑制しているようにさえ見受けられた。要するに、通信費の高さを含めた携帯大手3社に対するネガティブな報道をあえてしないのだ。

情報・通信業界の広告費が拡大傾向

図表3には主要業種のマスコミ広告費の推移を掲げた。新聞・雑誌・テレビ・ラジオで広告費が多いのは、1位「情報・通信」、2位「食品」、3位「化粧品・トイレタリー」となっている。確かにテレビを見ていても、携帯電話、インスタント食品、美肌化粧品、トイレ芳香剤などのコマーシャルをよく見かける。

近年の推移を見ると、どの業界の広告費もインターネット広告におされて横ばいか低下傾向にある中で、情報・通信業界の広告費は逆に上昇していることがグラフからは見てとれる。