米国・豪州にある一時解雇で、再雇用も視野に入る「レイオフ」とは異なる。法制上、その形態の無いニュージーランドでは「リダンダンシー」と言われる“失職”で、完全に職を失うことを意味する。

部下の涙と娘の涙

高田さんには「最後の仕事」が残されていた。部下のCAに解雇を言い渡すことだ。

一人ひとりに電話で伝えた。涙声で、声を震わせながら応える人もいた。幼いころから夢をかなえ、CAになったばかりのある若手からは、「まだ飛んでいたい」と絞り出すような声で訴えられた。自分が解雇を言われたこと以上につらい気持ちになった。ただ、全員が高田さんの解雇のことも知っていた。

「一人残さずねぎらいの言葉をかけてくれました。救われる思いがしました」

高田さんは家族にリストラされたことを伝えた。9歳の娘・リリーさんは、涙を流した。高田さんの仕事が無くなるのはつらい。でもそれ以上に、ずっと家にいてくれることがうれしいと話してくれた。

娘(右)と笑顔で写る高田さん
写真提供=高田さん
娘のリリーさん(右)と笑顔で写る高田さん

仕事で家を空けることが多く、娘との時間は多くはなかった。それまで、高田さんは働く様子を見せることが娘のためになると考えていた。しかし実際、娘が寂しさを感じていたことに、初めて気づかされた。

そのワケを聞いた高田さん自身も娘を一人にした時間が長く、理解してあげられなかったと涙が流れた。

リストラCAの再起

高田さんは義姉に、今後の身の振り方を相談することにした。

義姉はニュージーランド最大手の保険会社に役員として勤務するキャリアウーマン。自身も6回のリストラを経験し、今の地位にいることを初めて明かしてくれた。ニュージーランドでのリストラは、本人の能力にかかわらず、会社の一方的な都合で行われるのだと詳細に教えてくれた。「リストラを経験した人間は成長するものだ」との言葉を添えて。

リストラの急な展開に思考が追い付かず、前向きになれなかった。でも義姉の言葉で、奮い立つような気持になった。娘のためにも。時間が経つにつれて、愛する会社は組織をスリム化してでも残ってほしいと考えられるようになった。